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科学技術イノベーション基本計画への(総論的)意見

日本政府の内閣府から、[「第6期科学技術・イノベーション基本計画」答申素案についての意見募集]があり、しめきりの 2021年2月10日 になった。

わたしは、しめきりまでに内容に立ち入った検討をすることができなかったが、〈「科学技術イノベーション政策」さえあれば学術政策は不要〉とされるおそれを感じたので、それではいけないという意見を、500字という字数制限にあわせて書いた。その内容を下につける。

「総合知」をめざすこと、人文社会科学を視野にいれることはよい。しかし、人文社会科学の振興は科学技術イノベーション政策のわくにおさまるものではない。歴史的資料を掘り起こし、保存し、利用に提供していく仕事には、目きき能力の伝承と新技術を利用する能力の開発をかねそなえた持続性のある人の組織が必要だ。自然科学のうちでも、たとえば地球観測は、長期の時系列が得られる観測を継続することや、世界を網羅して観測をするとともに世界にデータを提供できるような国際協力が必要であり、過去には学術会議と測地学審議会が調整したうえで業務ごとに適切な省庁から予算要求がされていた。イノベーション政策の傘下になることによって持続性がうしなわれてはならない。文部科学省科学研究費の基盤研究、国立大学や大学共同利用機関の運営費、学術会議への諮問などをふくむ学術政策を、科学技術イノベーション政策から見れば、他者であり、連携の対象であると、明確に位置づけてほしい。今回でなく将来、学術政策と科学技術イノベーション政策を統合することは考えうるが、もしそうするならば科学技術基本計画の路線上の第7期ではなく大目標からたてなおす必要がある。