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宇宙基本計画工程表に関する意見

内閣府から、「宇宙基本計画工程表(平成27年度改訂)(素案)」に関する意見募集が出ていた。http://www8.cao.go.jp/space/plan/plan2/kaitei_fy27/public_comment2015_koutei.html

しめきり当日になってしまったが、11月17日、地球観測に関して、次の3件の意見を送った。

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工程表番号:11

GCOM-W, -Cは、各3基約15年継続することが、CEOSやGEOなどの場での日本の国際公約だったはずです。それぞれ1基あげたあとが「今後のあり方について検討」だけになっていることが、なさけないです。しかし、資金、運用機関、先導的利用者集団のいずれをとっても日本一国で支えきれなくなっているのかもしれず、あり方の検討は必要なのでしょう。廃止の言いかえではなく、前向きの検討をしていただきたいです。
これらは国際公共財をつくるものです。宇宙産業育成になるもの、国防に直接役立つもの、国内の防災に明確に役立つものでないので、優先されなかったのかもしれません。しかし、世界の防災や環境悪化防止は、世界の富を正味でふやすとともに、難民や政情不安のリスクを減らし安全保障にもつながります。また公開データは広く産業を支えるインフラストラクチャーとなります。
「あり方」として、宇宙航空研究開発が主眼ではなく地球環境モニタリングと地球環境研究基盤提供を持続的に担える組織、そして多国間共同事業を準備できる組織を構想し、法改正を伴う組織改革を視野に入れるべきだと思います。(番号46への意見もご参照ください。)

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工程表番号:46

地球観測については、工程表と「平成27年度末までの達成状況・実績」に「GEO戦略計画の推進」がありますが、「平成28年度以降の取組」では明記されていません。GEO関連を含むがそれに限らない地球観測に関する国際協力への取組を明記していただきたいと思います。
とくに、番号11で「今後のあり方について検討」とされているGCOM-W, -Cと、現有衛星の運用は明記されているものの次機の計画があるように見えないGPMは、国際協力なしには持続できないでしょう。
長期的にはESAと同様なアジア太平洋域の多国間共同運用体制を作っていくことが望ましいと思います。まず日本が一国事業で構想したものを国際共有に提供する姿勢を示し、他国にも寄与を求めていく必要があるでしょう。
これらの衛星は複数機をつないで10年以上運用を継続することで価値が出ます。次々に新しい技術を開発することを本務とするJAXA文科省科学技術庁系部署や経産省は不適任だと思います。他方、環境省GOSATで手いっぱい、国交省農水省は外国の国土には関心を示しにくいでしょう。適切な母体法人を選び国会に設置法改正を求めることが必要でしょう。

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工程表番号:47

「DIAS」への言及があります。文部科学省でこれまで2期10年にわたって実施されてきたDIAS事業の理念、つまり、多様な衛星観測データと地上観測データを統合利用できるようにし、さらに数値シミュレーションの入出力とも連携できるようにするためのプラットフォームを作ることは、今後とも重要だと思います。また、現在のDIAS事業のデータアーカイブには貴重なデータが蓄積されており、その維持を続けることも必要だと思います。しかし、今後に向けては、事業のあり方を大幅に見なおす必要があると思います。とりわけ、ICSU (国際科学会議) のもとのWorld Data System (WDS)という事業があり、日本では情報通信研究機構やいくつかの国立大学が積極的に参加していますが、これとDIASとの連携がうまくいっていません。宇宙基本計画の工程表としては、DIASという固有名ではなく普通名詞にもどし(「データ統合解析システム」でもよいでしょう)、「地球観測データの国際標準化・共同利用に向けた施策の検討・推進」には総務省(NICT監督官庁)、国土交通省農水省も「等」ですませずに明示していただきたいです。