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もはや自動車をふやす政策をとる時代ではない

12月10日、内閣が2012年度税制改正大綱を決定した。

その報道、たとえば読売新聞の12月10日の記事「『自動車産業は牽引役』…税制大綱を閣議決定」によれば、重要な改正点として、自動車重量税の減税がある。

経済成長のために、自動車産業の売り上げが多くなるように誘導したかったらしい。

しかし、自動車の数がふえることが望ましいことだろうか? 自動車がふえれば、ガソリンまたはディーゼル燃料の消費もたぶんふえるだろう。輸入しなければならない石油の量もふえるし、地球温暖化を強めることになる。排気ガスによる大気汚染も、新型車のほうが運転距離あたりでは少なくなっていると期待されるけれども、運転距離がふえるぶんはふえる。交通整理や事故防止のための警察などの費用もたぶんふえるだろう。また、自家用車がふえれば、公共交通機関の経営が苦しくなって、車を運転できない人にとってはかえって移動が不便になるかもしれない。自動車がふえることの波及効果の多くは国民総生産をふやすけれども、国民総幸福をふやすとは限らない。

それに、日本の自動車重量税を減税することは、日本の自動車消費を促進するのであって、それは必ずしも日本の自動車生産につながるとは限らず、自動車輸入を促進することになるかもしれない。(そして、自動車輸出を促進することにはならない。)

政府は、声の大きい業界のいうことをきくのではなく、長い目でみてどのような財の生産を奨励するのが国民の幸福にとって望ましいかを考えて、増税・減税の方針をたてる必要がある。

(自動車に限った話ではない。)