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TPPを環太平洋地域の食料生産を持続可能にするための連携にしよう

2月5日にTPP貿易協定には自然資本保全条項(ナチュラル・ダンピング関税など)が必須と書いたのだが、ダンピングという用語づかいは、相手国(アメリカ合衆国を想定)に対して必要以上に敵対的だったかもしれない。もっと親切に考えることにしよう。

===== 日本の総理大臣に発言してほしいこと =====

われわれ日本国民は、アメリカ合衆国を含むすべての国の食料生産が将来とも持続してほしい。したがって、どの国の農業も、農地の土壌をやせさせたり、化石地下水を枯渇させたり、化石燃料なしではやっていけないものであったりしてほしくはない。また、われわれは経済のしくみとして市場経済が有効であると考えているけれども、「公害」の経験から、外部不経済の解消には、市場のしくみだけでも政策的手段だけでもなく、両方を組み合わせる必要があることを知っている。

そこでわれわれは次のような提案をする。TPPに参加する各国が、農業の持続性のための基金(Fund for Sustainable Farming, FfSF)を設立するとともに、持続性をそこなうことによって市場価格が安くなっている農産物に対してはその外部不経済に相当する課徴金をかけて、そのお金をFfSF基金に追加することにする。農産物を輸入する国は、持続性がそこなわれているにもかかわらず適切な課徴金がかけられていないと判断した場合は、関税のような形で課徴金をかけることもできるが、その収入は他の関税と合算せずFfSF基金に提供するものとする。

持続性の合理的判断は非常にむずかしい。しかし、天然資源の減損は判断基準の確立を待たずに進む。各国が暫定的に判断基準を設定してすぐ始めるべきである。もし紛争が起きたときに調停する方法をあらかじめ条約で決めておくことにしたい。

1997年の気候変動枠組み条約締約国会議、2003年の世界水フォーラム、2010年の生物多様性条約締約国会議の主催国である日本としては、持続性をそこなうことの指標として、(1)化石燃料の消費量、(2)化石地下水の消費量、(3)生物多様性の損失の指標(ただし定式化できるまでは暫定的に計算外)からなるものを使うことにする。

日本のFfSFの基金は国内だけでなく外国の農業の持続性を高めることにも貢献することにしたい。政府開発援助(ODA)とするので利用を希望する国は国際協力機構(JICA)に申しこんでほしい。ただしこの場合、対象は(現代ふつうに言われる意味での)開発途上国に限らない。この問題に関する限りすべての国が開発途上だからである。アメリカ合衆国からの利用申請も歓迎する。ただし、提案が実際に農業の持続性を高めることになるか技術評価(テクノロジーアセスメント)を行ない、合格した場合に限って資金を提供する。