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定量的地球物理学に寄与した東洋の伝統

確かめられていない科学史的思考の覚え書き。

20世紀の後半に、気候モデルをはじめとする地球物理学の数量的方法が発達したことに、日本出身者(おもにアメリカ合衆国で活動したので日系一世というべきかもしれない)が多数活躍したことは、偶然ではないだろう。

「そろばんの伝統」仮説。西洋の数学には論証の伝統があるが、東洋の数学には数値計算の伝統がある。数値シミュレーションのプログラムを組むには両方の伝統の結合が必要だった。

「ゆく川」仮説。大循環モデルによって認識される気候システムは、時間とともに変化しうるシステムであるにもかかわらず、準定常状態をとる。これは保存系でなく強制散逸系である。西洋には、不変なものと、劣化するもののそれぞれの認識はあるが、個々の要素は劣化しながら全体はほぼ不変なものという認識は東洋人が提供する必要があったのではないか?

「学際」仮説。地球物理学には、地球に関する現象論的認識と、物理法則から出発する理論的認識の両方が必要だ。20世紀なかばの東京大学・東北大学などはこの両方にまたがる教育を提供できたが、世界のほとんどのスクールはどちらかに偏っていた。

(複数の要因が働いているかもしれないので、仮説は排他的ではない。)