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江戸時代にもどることはできないが、江戸時代を参考にすることは必要

今の日本を含む工業先進国の生産・消費活動は持続可能でない。

一方で、持続可能な資源供給の範囲で今できている消費を続けられるような技術を開発し普及させるような仕事も必要だと思う。

しかし他方で、今できている消費のうちある種類のものはあきらめて別のもので置きかえる必要もあると思う。

人間個人が経験できることに限りがあるので、歴史を参考にすることは重要だ。

たとえば、日本の社会が全面的に江戸時代の状態にもどることは明らかに望ましくない。その後に、身分制度が廃止されたことや、近代医学・衛生学によって伝染病が減ったことは、もちろん価値判断によるが、多くの人が進歩と認めると思う。また人口もふえてしまったので、江戸時代の産業体制では現在のレベルの(今後少し減るとしても)日本の人口を支えられないだろう。

また、江戸時代の産業体制はじゅうぶん持続可能だったとは言えない。明治時代には今よりも「はげ山」が多かった。多くの場所で、江戸時代の間に、森林の再生能力をこえる森林利用が行なわれていたにちがいないのだ。【2012-05-21補足: 草地として維持管理されていたところもあるので、持続可能性については事例ごとに検討しないとよくわからない。】 明治以後に森林が回復したのは、化石燃料あるいは外国の木材の利用ができたおかげにちがいない。

しかしそれにしても、化石燃料を使わずに、平地に限ればかなり高い人口密度を、ききんはあったものの世界的に見ればわりあい持続的に維持してきた実績ではある。それは、気候・水資源・海との位置関係などの自然条件に適応してできたことだ。

江戸時代の社会を成り立たせていたしくみをそのまま再現するのは望ましくない。また、そこから個別の要素を取り出しても動作可能とは限らない。だからと言って、「江戸時代に学ぶ」ことがないわけではない。

近代の進歩を生かしながら持続可能な社会の設計図はまだない。小規模な試行錯誤をしながら考えていくしかないだろう。そのための道具箱に、昔の要素も今の要素も用意しておくのがよいのだと思う。