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{x, y, z} {u, v, w}はどの方向?

3次元空間中の位置は3つの実数で表現できる。直交直線座標を使って(x, y, z)で表現したり、球座標を使って(r, θ, φ)で表現したりする。

地球上の位置は、(緯度, 経度, 高さ)で表現することが多い[気象学の教材ページ参照]。 正確に述べようとすると、地球の形を球で近似するのが第1近似だとすれば、地理緯度には第2近似の回転楕円体、海抜標高には第3近似のジオイド(geoid)がかかわる[地理情報学の教材ページ参照]。しかしここでは第1近似ですませておくと、緯度とは球座標のθを直角からひいたもの(ラジアン表現でπ/2 - θ)であり、経度が球座標のφ([2012-10-31補足] こちらは棒がまるの上に出る字体を使う)にあたる。しかし、気象学の文献の数式では、経度にλ、緯度のほうにφ (ただし、棒がまるの上に出ない字体)を使うのがふつうだ。なお、高さ z は球座標の動径 r の、ある基準レベル(ふつうは平均海面)からの差である。

地球の一部を平面であるかのようにみなして、直交直線座標を使うこともよくある。このとき x, yをどういう方向にとるかは、専門分野によってまちまちのようだ。気象では、地球を平面に投影した地図をそのまま幾何学の(x, y)平面であるかのように扱うのがふつうだ。(x, y)平面はふつう x軸が右へ向かい、y軸が上へ向かうようにかく。多くの場合、地図は北を上としているので、x軸は東向き、y軸は北向きとなる。

しかし、北極圏の地図や北半球全体の地図などの場合は、北極中心の投影が使われる。(天気図では等角投影が使われることが多いので、方位図法のうちではステレオ投影が選ばれることが多い。) どの経度を上にとるかには共通の習慣はなく図の作成者が決めることだ。ともかくこのような地図上の右向きをx、上向きをyとして扱うこともある。

3次元の直交直線座標には右手系と左手系がある。親指と人さし指を直角に開いて、中指をそのどちらとも直角に向けた形を作ると、中指の向きが右手と左手で逆になるのだ。親指をx軸、人さし指をy軸、中指をz軸とする。気象では z 軸を鉛直上向きにとるので、上のx, yの約束と合わせると、右手系を使っていることになる。【海洋ではx, yは気象と同じでz軸を鉛直下向きにとることがあり、この場合は左手系になる。しかしz軸を上向きのままで値を負にして使う流儀もある。】

さて、空間中の位置が3次元ベクトルならば、位置の時間微分である速度も3次元ベクトルだ。速度は英語 velocity にちなんで v であらわすことが多いが、そのベクトルの成分について式をたてるとき、x, y, zそれぞれの方向の成分を u, v, wであらわすことが多い。xが東向き、yが北向き、zが上向きならば、uは西風成分、vは南風成分、wは上昇流成分ということになる。【鉛直速度については「下からの風」のような表現はしない。】