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気水象、気水圏

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

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この記事は、学術用語に関する覚え書きだが、一般的な解説ではなく、わたしが苦しまぎれに導入した用語についての説明である。これからもこの用語を使うかもしれないので、参照可能にしておくために記事にした。しかし、また考えなおして書きかえる可能性もある。

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「気候変動と災害」(増田, 2014)という文章を書いたとき、わたしは、次のような用語を導入した。

一般的な用語ではないが、ここでは、大気・海洋・陸水・雪氷をまとめて「気水圏」、そこで起こる現象を「気水象」、それによるハザード・災害をそれぞれ「気水象ハザード」「気水象災害」のように呼ぶことにする。

大雨による洪水や、雨の不足による渇水などは、「気象災害」とも「水災害」とも言われる。「気象災害」と「水災害」という用語の意味の広がりは、完全にではないが、大きくかさなっている。自然災害に関する議論では、災害を起こしうる自然現象を「ハザード」と言うようになった([前の記事]参照)。わたしは、「気象ハザード」と「水ハザード」を一括して示す表現がほしかったのだ。

そのような表現の前例として思いあたるものがなかった。ただし、「気水圏」ということばには覚えがあった(その文脈については、このあとの3節で述べる)。ここで問題にしたいのは「圏」というよりもそのなかで起こる「事件」(event)あるいは「現象」なので、「気象」を拡張したような「気水象」という表現を使おうと思った。

「気水象」という表現を、わたしの発明だとは思ってはいない。前例はあると思うが、確かめていない。最初に使ったのはだれかを調べて明示するべきなのかもしれない。しかし、申しわけないが、それだけのてまをかけるよりも早く、使える用語がほしい。過去の使われかたを調べることは、それに関心のあるかたにおまかせしたい。もしわたしの使いかたは不適切だという指摘があれば考えなおしたい。

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「気水圏」ということばは、すなおにとらえれば、大気圏(atmosphere)と水圏(hydrosphere)をあわせたものをさすと考えられる。

ところが、それだけでは必ずしも広がりが定まらない。「水圏」は、おもに海洋をさすと考えられるだろう。陸上の水(湖、川、土壌水分、地下水など)も水圏に含まれると考える人もいるだろうが、水圏とは別の「陸」に属すると考える人もいるだろう。地球上の雪氷(固体のH2O)の全体を、地球を球殻状におおっているわけではないけれども、雪氷圏(cryosphere)と考えることがある。水圏をH2Oを主成分とする「圏」だと考えれば雪氷圏も含まれるけれども、液体の「圏」だと考えれば含まれないことになるだろう。

わたしが「気水象ハザード」を論じるときには、陸上の水も、雪氷も、含めたものを考えている。

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「気水圏」ということばは、国立極地研究所や、それがとりしきっている日本の南極観測事業で使われていた。1980年代には毎年「気水圏シンポジウム」が開かれていた(今は極域科学シンポジウムの部分になっている)。英語の出版物でそれにあたるものは polar meteorology and glaciology となっていた。つまり、気水圏という表現で念頭にあったのは、気象学の対象となるような大気と、雪氷だったのだ。おもに陸上の水を扱う水文学(hydrology)が出てこないのは、南極では雪氷に比べて液体の水がわずかしかないからだろう。

極地研で海洋がどう扱われているかは、わたしはよく理解していないが、海洋学のうちの海洋生物学は「生物」、海洋物理は「気水圏」に含まれるようだ。

なお、極地研の研究対象の分類には「気水圏」と別に「宙空」というものがある。電離層やオーロラが起こるところなどの高層大気(気象学の用語で言えばだいたい「熱圏」)は「宙空」で、対流圏は「気水圏」なのだ。中層大気(成層圏・中間圏)がどちらに含まれていたかは、(わたしには)調べてみないとわからない。

ともかく、わたしが考えたい対象の範囲に、極地研の「気水圏」という用語は、合っていた。必要な修正は、陸上の液体の水を含むことを明確にすることだけだった。

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