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公用車による子どもの送り迎えの件について考えたこと

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

時事問題に関して考えたこと。わたしの記述態度については[このブログの記事の性格 (3) 時事的問題を扱う態度]をごらんいただきたい。

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ある国会議員が、公用車を使った通勤のついでに子どもを保育園に送り迎えしていたことを,「公私混同」として非難する論調で、週刊誌が話題にした。

これに対して賛否両論があった。与党の議員のことだったので、とくに野党支持者が、与党を非難する材料にしたようだ。しかし、野党支持者のうちにも、この件に関しては、党派的対立ではなく、子育てと職業の両立という観点を重視して、送り迎えを認めるべきだという意見もあった。

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わたしにとってこの話題は、[2016-01-24 議員の育児休業の話をきっかけに考えたこと]につながる話だ。

(事例も、同じお子さんに関することらしいのだが、わたしの観点からはそれは偶発的関連に見える。)

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公用車は、議員の職にともなうものではなく、大臣政務官の職にともなうものだった。

わたしは、その公用車が、どのような趣旨で提供されているのかをよく知らない。それによって、判断は変わってくる。

もし、政務官としての出張(近距離のものは「外勤」と呼ばれるかもしれないがそれも含む)に限り、通勤には使わないものならば、子どもの送り迎えに使うのも不適切だ。

実際は通勤に使われており、それは正当な使いかたらしい。それならば、通勤のついでの保育所の送り迎えに使うのも認めるのが妥当と思う。とくに、保育所が本人の職場のひとつである議員会館と同じ建物にあるのならば(子育て中の議員や議会職員が仕事を続けるのを助けるためにつくられたもののはず)、さしつかえはないはずだ。実際、政務官としての所属の省の見解も、この条件で送り迎えに使うのはよい、とされたらしい(わたしは出典を確認していないが)。

(その他の私用に使ったという疑惑もあるようだが、わたしはひとまずその問題には立ち入らないで、通勤にともなう子どもの送り迎えに話題を限る。)

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問題は、政務官に公用車を使う権限を与えるのが適切か、また、それを通勤に使ってよいとするのが適切か、ということかもしれない。

公用車を政務官という職に付随する特権と考えるのならば、公共の観点からは、与えるべきではないということになるだろう。

その職を(よりよく)遂行するための手段ならば(それが証拠だてられるのならば)、与えるのが適切だろう。証拠だては個人ごとでなく職種ごとでよいと思う。

また、警備上の必要から認めるべきこともあるかもしれない(現実に必要かどうかはよくわからないが)。

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議員にはないが政務官にはあるというのは、適切だろうか?

議員の仕事は、議員として会議に出席することなどに限れば、常勤職にしては拘束時間はあまり多くないはずだ。しかし、議員として働くためには、選挙区の有権者と会ったり、政策に関する調査をしたりする必要もあり、それを含めると、かなり忙しい職業だろう。ただし、どれだけ働くかは議員自身の裁量によるところが多く、なまけていた場合のペナルティは、次に選挙に出たとき落選する可能性が高まることだけかもしれない。

政務官は、議員が兼ねる。これは、すでに常勤相当の仕事をかかえた人を、さらに働かせることにあたる。兼業をしやすくするために、ふつうの雇用労働者ならばしない支援をすることも、妥当だと思う。つまり、直接に政務官として働くときだけでなく、政務官として働くことと議員として働くことの間、あるいは、勤務と個人生活との間の、時間のむだをはぶくことを支援するのは、妥当だと思う。通勤に公用車を使うことも、これにあたる。そして、国の政策として、(どれだけ本気かには疑問があるものの、少なくともたてまえとしては)育児中の人が職業をもつことを奨励するのが原則となった以上は、幼児の送り迎えを支援することも、妥当だと思う。

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政務官や議員以外の他の職業の人とくらべて、政務官はめぐまれているかもしれない。これを、特権と見て、特権を剥奪して、一般の人(国民)と同じ待遇にするにべきだという意見は、一面で正義にかなっているといえるだろう。しかし他方、国民から選挙で選ばれた議員に、しっかり仕事をしてもらうために、働きやすい条件を提供するべきだ、という理屈も、正義にかなっているといえるだろう。政務官は内閣が選ぶので、国民全体を直接代表するとはいえないが、議院内閣制の制度にしたがって国民から間接的に信任された人だと言えるので、この理屈もなりたちうると思う。

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今の野党の支持者の多くは、与党よりも強く、「男女にかかわらず子育て中の人が職業を続けられるような社会にするべきだ」また、「雇用に関する男女差別をなくしていくべきだ」と考えていると思う。それならば、たまたま問題になったのが与党の政治家であっても、政治家としての仕事と子育てを両立させるための支援はよいこととすべきだと思う。

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政治活動を闘争だと考えて、自分が野党の政治家や支持者ならば、与党の力をそぐことが正義であり、その手段として、政務官が仕事をするじゃまをすることも正義である、ととらえて、政務官が子どもの送り迎えに公用車を使うことを妨害する言動をする人もいるかもしれない。わたしは、そういう態度に賛同しない。

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野党の立場から、政務官に公用車を使わせるべきでないという理屈があるとすれば、与党の議員は、政務官になることによって、事実上、議員としての活動も支援されるが、野党の議員に同等の支援がないのは不公平だ、という理屈だろう。野党の議員は、議会への出席のほかに、政府の政策に対する質問や対案をつくる仕事を、政府の助けなしにしている。それと対等にするために、政務官への(公用車使用などの)支援は、厳密に政務官としての業務に限るべきで、議員としての仕事や個人の時間のやりくりの支援(だと疑われる用件)に向けてはいけない、という理屈はありうると思う。わたし個人は今のところ、この理屈を支持しないが、考えを変える可能性はある。