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気象庁などの公共機関のウェブサイトの広告についての意見

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも明示しません。】

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2020年7月6日、気象庁がウェブサイトに広告をのせることにしたことを発表した。

そして、気象庁ウェブサイトの「気象庁ホームページについて」のページの下に、つぎの文書がおかれた。

その「別紙」として、「広告掲載基準」がしめされた。

2020年9月11日、9月15日14時から広告をのせはじめるという発表があった。

ところが、実際に広告をのせはじめてから1日もたたないうちに、「広告掲載基準に沿わない可能性がある広告が掲載されたため」、広告の表示は中止され、「広告枠」だけが表示されるようになっている。
2020年9月16日の気象庁報道発表はつぎのところにある。

NHKのつぎの報道によれば、「医薬品の広告表示に関する法律などに違反するおそれのあるものが複数確認されました」とのことだ。

また、個人ブログ「280blocker」の2020年9月15日の記事(9月16日改訂) によれば、「ブランド品を格安で販売する正規代理店ではない怪しげなサイト」、「連絡先不明の不思議な日本語の携帯ケースショップ」などがあった。

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(わたしは 9月16日の報道までは はっきり認識していなかったのだが) 気象庁は 7月6日の報道発表で「運用型広告」をつかうと予告していた。

「運用型広告」とは、読者ごとに、読者のなんらかのウェブ閲覧履歴を参照して、見せるものを変えていくような広告である(らしい)。有名なものとして Google の AdSense がある。実際、今回の問題をおこしたのは Google AdSense である (気象庁が契約したのは Google とは別の業者だが、そこが Google のサービスを利用していた) らしい。

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運用型広告は、どんな方法で読者を同定しているのか、わたしはよく知らない。

ウェブサーバーで統計をとっているとして、読者が職場などのゲートウェイごしにインターネットにアクセスしているとしたら、サーバーに記録されるのは、ゲートウェイのIPアドレス、OSやブラウザの種類などだけだろう。それが共通の人の情報はまざってしまうだろうと思う。(それでも、広告は、同じ職場の人に共通な傾向を利用できるだろうが。)

あるいは、読者のブラウザに「クッキー」を入れることによって、読者を区別して認識しているのだろうか?

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(気象庁ウェブサイトとは直接関係ない話になるが) わたしは 2005-2010年ごろ、英語圏と日本語圏のブログを多数読んでいた。その期間の途中で、今でいう「運用型広告」がふえてきた、という印象がある。英語圏の個人ブログに、日本語の、しかも日本にあるサービスに関する広告が出ていておどろいたこともある。その個人ブログの趣旨とは関係なく、ブログ機能を提供するプロバイダとの契約で出ている広告で、読者のIPアドレスやブラウザの言語設定などから住所や言語を判断していたらしい。

そのころたびたび見た、非常に不愉快な広告として、 「Windowsがこわれている。これをダウンロードして修復を」とすすめる広告があった。もしかしてほんとうにWindowsがこわれたのを知らせてくれたのかと思って心配した。おそらく、詐欺かいたずらにちがいない。わたしは警戒してそのソフトウェアをダウンロードしなかったから、もしダウンロードしたら、おかねをとられるのか、あるいは、そこで Windowsをこわされてしまうのか、あるいは、わらいものになるのか、知らない。

また、ポルノとはいえないが、いわゆる「エッチ」な画像が出たことがあった。職場で見ていると、そういうのはこまる。ブログの本文を読むことは、当時のわたしの(研究型の)業務のうちだったので、変な広告がはいることは、業務妨害と感じられた。

その後、広告を一時的に表示させなくする機能や、広告に対して苦情をうけつける窓口が、ふえてきたとは思う。しかし、いまも、広告に不満を感じても、それを広告をだしている人にわかってもらうことはむずかしい。

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わたしは、気象庁のような公的機関のウェブサイトが、広告をのせること自体は、かまわないと思う。もちろん、それが広告であることがまぎれなく示されていることが前提条件だ。広告主のメッセージが公的機関のメッセージだと誤解されてはいけない。

しかし、あいてによって変わるような広告をのせるべきではないと思う。「運用型」ではなく、いわば「固定型」、つまり、同じ日に見るのならば、だれが見ても同じ広告が見えるようにするべきだと思う。そうすれば、あらかじめウェブサイトの管理者が確認して適切なものを選別することができるし、選別がうまくいっているかを他の読者が確認することもできる。

いつも同じ業者の広告をのせることは、公的機関が特定の業者の利益に奉仕することになりかねないという問題がある。その対策としては、広告を定期的に入れかえるようにするべきだ。とくに、同じ業種で複数の業者から広告をのせる希望があるばあいは、そのうち特定の業者をひいきにしない配慮が必要だ。広告収入を最大にすることよりも、公平性を優先させるべきだと思う。

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気象庁自身の広告ならば (気象庁のプロダクトについて、標準的な入口にくわえて、そのプロダクトが役にたちそうな読者の目をひきたいのならば)、読者の閲覧履歴を見て見せるものをとりかえるのもよいかもしれない。そのばあいは、広告業者にまかせるのではなく、気象庁自身が、どんな人にはなにを見せると、判断しなければならない。

ここまで、気象庁を例にあげてきたが、問題は多くの公共機関に共通だと思う。