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題名を思い出せない曲、「故郷の空」、「ほたるの光」

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

【これはまったく個人的な覚え書きで、知識を提供する記事でも、意見を主張する記事でもありません。】

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わたしは、メロディーを思いだすが、曲の名まえも、歌詞も思いだせない、ということがよくある。そばにひまな人がいれば、はなうた か何かでメロディーを持ち出して、これはなんの曲だったか と たずねれば、わかるかもしれない。ところが、ちかごろわたしは、1人でいる時間がおおくなり、ひとと話すときはたいてい(すくなくとも、あいては)仕事中なので、たずねる機会がすくなくなってしまった。ネット上で不特定の人にたずねたいとも思うのだが、他人の著作物とくに音楽関係のものを公開の場所に置くことにはきびしいご時勢なので (著作権の期限をすぎていれば堂々と置けるのだが、それもわからないので)、はばかられる。それで、わからないままになっていることがおおい。

つぎに書くのは、自分で思いだせて、われながら おかしかった例だ。たまたま ふたつとも同じ部類の曲だった。

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- 2a -
道 (日本の町の街路) を歩いていて、あるメロディーを思いだした。歌ではなく、リードオルガンのようなブザーのような ねいろ の器楽の形だった。しばらく、なんの曲かわからなかった。

しばらく そのふしを口ずさんでいるうちに、どこで聞いたのかを思いだした。交差点の信号機だ。いまでも近所に、このメロディーを使っている信号機がある。

たしか1990年ごろには、十字路で、たとえば東西に横断できるときと、南北に横断できるときに、それぞれちがったメロディーをならす信号機があちこちにあった。札幌に行ったとき、どの交差点も同じメロディーをならしていたという記憶がある。

その一方は、音律は近代の平均律になっているが、日本のわらべうたの「とおりゃんせ」だった。信号がうたうわけではないが、このうたのもんくは、たしかに、人を とおしたり とめたりする交通信号の役わりに合っている。しかし、ちかごろ、このふしをつかっている信号機に出あうことはない。

もう一方のふしが生きのこっているのだ。これは西洋の長音階だが「ヨナぬき」だ。行進曲のようでもありそうでないようでもある。曲の名まえや歌詞は、まだ思いだせなかった。

- 2b -
母が認知症で、記憶がおとろえてしまった。それでも、子どものころにおぼえた童謡や唱歌の記憶は残っている。わたしが童謡や唱歌のCDをかけると、母はわりあいきげんがいい。

その中に、「故郷の空」があった。信号機のメロディーは、これだった。

「故郷の空」のふしは、もともと、スコットランド民謡の Coming through the Rye だ。わたしが子どものころ母が買ってきた英語の歌のカセットテープにはいっていたのを覚えている。英語の歌詞を日本語で説明したものも読んだおぼえがある。当時のテレビの娯楽番組で、直訳にちかい「だれかさん と だれかさん が 麦畑」のような歌詞で歌っていたのも思いだせる。スコットランド民謡に特有な「スコッチ スナップ」というリズムがあって、この歌も本来はそのリズムで歌われていたのだという話も読んだ。

しかし、信号機のメロディーは、スコッチスナップではなく、3:1の時間分割のリズムがつづくもので、わたしにとっては、Coming through the Ryeではなく、「故郷の空」でしかありえなかった。

いずれの歌詞から考えても、信号機に使われる理由が見あたらない。曲が、それにあわせて人が歩くのに適していて、しかも「とおりゃんせ」とは部分的に聞いても区別できる、という条件でえらばれたのだろう。

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- 3a -
別のあるとき、「いろはにほへと ちりぬるを」に、ふしをつけて歌いたくなった。そのとき、この歌詞につけられた曲であるかのように思いおこされた曲があって、「ゑひもせす」まで歌ってみた。曲は4拍子で、長調だがヨナぬきだった。その曲は古くからあるもので、世のなかで通用している曲名が「いろは」であるはずがないことには気づいたが、なんという曲か思いだせなかった。七五調の四句の歌詞にあう曲というだけならば、たくさんある。

(実は、わたしの記憶のなかには、「いろは」の曲がもうひとつある。自分の創作なのか他人の創作なのかわからなくなっているので、紹介しにくい。こちらは西洋音階でなく、たぶん日本の伝統音楽に近いふしまわしなのだが、音律は平均律になってしまっている。)

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数日後に、また「いろは」を歌いながら、やっと気づいた。曲は「ほたるの光」だった。これももともとはスコットランド民謡 Auld Lang Syneだ。しかし、わたしが思いだしたリズムはスコットランドふうではなく、日本の唱歌になっていた。

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わたしが「ほたるの光」を思い出そうとすると、3拍子のワルツふうに編曲されたものが出てきてしまう。標準的な歌いかたならば 3:1 の長さになるところを、2:1 にしてしまったものだ。たぶん、わたしが若いころよく出入りしていた商店か公共施設で、閉店時間にいつも 3拍子にした「ほたるの光」をかけていたのが、わたしの記憶にしみついているのだ。

【[2020-12-18 補足] この3拍子版には、「別れのワルツ」という別の曲名がついている。1940年に公開されたアメリカ映画 Waterloo Bridge (日本語名は『哀愁』) でつかわれていて、日本では 古関 裕而が(別名をつかっていたが) 採譜・編曲してひろまった。】

しかし、「いろはにほへと」を歌おうとしたとき出てきた曲は、3拍子ではなく4拍子だった。