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年棒

データのグラフ表現について書いた記事[2015-04-13「グラフの軸をゼロから始めないのはうそつきか / そろばんグラフのすすめ」]の中で、棒グラフで表現される情報の例として「年俸」を出した。それを書いたときは忘れていたのだが、「年俸」が「年棒」と書かれているのを見ることはめずらしくない。

これは誤字であり訂正すべきだが、多くの人にとって「俸」の字はふだん使うものではないので、意識的に調べないと書けない人が多いのはあたりまえだとも思う。

20世紀後半の長いあいだ、公務員に関する用語として「俸給」はあったのだが、日常会話では「給料」で置きかえられるのがふつうだった。プロスポーツ選手の待遇に関心のある人たちだけが「年俸」を知っていたと思う。

20世紀末に、研究職の雇用も「年俸制」にしようという政策が、どこか「上」のほうから降ってきた。ある職場で ある職種の人は、自分の意志でなくほぼ強制的に「年俸」をもらう立場になり、自分で意識して選んだのでない「年俸」ということばを使わされることになった。同時期に、それまで公務員であった研究職の多くが公務員でなくなったのでその給料は「俸給」ではなくなった。「俸」の字は「年俸」にしか出てこないのだ。ただし「ネンポー」といえばまず「年報」だ (研究職は年度ごとに研究所の「年報」(年次報告書)の原稿を書かなければならない立場になることが多い)。それとは区別しなければならない。うろおぼえで「年棒」が出てくるのも無理もないではないか?