macroscope

( はてなダイアリーから移動しました)

Øテレ、NIPPØN TV

【まだ書きかえます。いつどこを書きかえたかを かならずしも明示しません。】

- 1 -
電車のかべに広告が出ていた。

Øテレ

1文字めは、たて長の まる に、左下がりの ななめ線 が はいっている。デンマーク語のアルファベットにそのような字があるので、ひとまずそれをつかって書いてみた。くわしくいうと、デンマーク語の Ø の ななめ 線は まるのそとにつきだしているが、広告の文字のは まる に接したところで とまっている、というちがいはあったが。

デンマーク語には「 Ø 」ひと文字の単語があり、「島」にあたる意味だそうだ。デンマーク語の発音はむずかしいが、Ø があらわす音は O と E の中間で、ドイツ語やスウェーデン語の Ö とにたものらしい。しかし、ドイツ語の Ö は 日本語の五十音のエ段で近似するのがふつうだけれど、デンマーク語の Ø をどう近似するかはきまっていないようだ。かりに「ヨ」で近似するとすれば、この文字列は「ヨーテレ」となる。

また、それとは別に、数字の 0 を (おそらく ローマ字の O と区別するために) ななめ線を入れた形にしていたことがあったのをおもいだした。それならば、この文字列は「ゼロテレ」となる。

- 2 -
広告には 2行めがあった。

NIPPØN TV

ここまでの解読にしたがえば、(そして TV をひとまず英語読みにすれば)、これは「ニッピョン ティーヴィー」または「ニップ ゼロ エヌ ティーヴィー」だろう。

しかし NIPPØN は NIPPON の O の字体をひとひねりしたものである可能性のほうが高そうだ。それならば、これは「ニッポン ティーヴィー」だ。「日本テレビ」というテレビ局があるので、それをさすのだろう。そのふつうの読みは「ニホンテレビ」だったはずだが。

「日本テレビ」は「日テレ」と略される。1行めの「Ø」は「日」の字体をひとひねりしたものなのだろう。わたしは、文字を情報伝達手段としてとらえるたちばから、「日」と「О」に同じ図形をわりあてるようなまぎらわしいことをしてほしくないのだが、日本テレビという会社 (の広告部門) が、わざとやったらしい。

- 3 -
「Ø」という図形は、文字情報のなかで、文脈によっていろいろな意味につかわれる。数学で空集合をあらわしたり、設計製図で直径をあらわしたりする。

そのうちで (とくに ななめ線がまるの外に出ない図形で) わたしがよく思いうかべるのは、ローマ字のオーと算用数字のゼロを区別するときにつかわれる字体だ。

- 4 -
もともと、ローマ字の О と 算用数字の 0 との図形の特徴は同じで、よく似たフォントをつかえば見わけることができない。わたしの親がつかっていた1950年代の英文タイプライターには、数字キーがあったが 2 から 9 までで、1 は小文字のエル、0 は大文字のオーで代用するようになっていた。

しかし、電気通信では、早くから オー と ゼロ は区別されていた。それを印字するときには区別できる字体をつかう必要があった。わたしが具体例を知ったのは 1970 年ごろで、当時、まだアルファベットは大文字だけが想定されていた。

オーとゼロを区別するひとつの形が、

  • オーは ななめ線を入れて Ø とし、ゼロは 単純な 0 とする

というものだった。今回の「NIPPØN」はその習慣にしたがったものとみることができる。

ところが、ややこしいことに、

  • オーは 単純な O とし、ゼロは ななめ線をいれて Ø とする

というやりかたも見られた。こちらのほうがおおかったとおもう。Ø がオーなのかゼロなのか判断するには、いくつか答えのわかる実例を見てみる必要があった。

そのほかに

  • オーは 上に横棒をつけて Ō とし、ゼロは単純な 0 とする

というものがあった。これは、上の横棒 (macron) を長音記号としてつかうこととぶつかる。実際わたしは、1970年ごろの計算機プログラミングの入門的記述を読んだとき、「CŌBŌL」という文字列を見て、「コーボール」というプログラム言語があるのだとおもった。

わたしは、

  • オーは右上に小さいまるをつけてそこから線がすこし外にのびた形にし、ゼロは単純な 0 とする

のがよいとおもい、手書きで ときどき やってみた。しかし、それを「Q」と読んでしまう人がいた。大きいまるに小さいまるがついてそこから外に線がのびている、という図形の特徴を認識してしまい、まるが右上にあるか下側にあるかの判断があとまわしになるらしい。

そんなわけで、オーとゼロが見わけられる字体には名案がないままだ。