macroscope

( はてなダイアリーから移動しました)

「国際地球観測年とデータ共有の始まり」 (有田 正規) の関連の話題 (2)

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

- 1 -
[2022-09-08 の記事] の つづき。

科学』 (岩波書店) の 有田 正規 (まさのり) さんによる連載は、かならずしも毎号ではないが、まえの記事で紹介した第1回 (有田, 2022a) につづいて 2022年 11月号に第2回 (有田, 2022b) が出た。【[2023-01-11 追記] 2023年 1月号に第3回 (有田, 2023a) が出た。】

  • 有田 正規, 2022a: 国際地球観測年とデータ共有の始まり (オープンサイエンス事始め -- 科学データは誰のものか (1)) 。科学, 92: 777-784 (2022年 9月号).
  • 有田 正規, 2022b: 南極をめぐる米国とソ連の攻防 (前編) (オープンサイエンス事始め -- 科学データは誰のものか (2)) 。科学, 92: 1030-1036 (2022年 11月号).
  • 有田 正規, 2023a: 南極をめぐる米国とソ連の攻防 (後編) (オープンサイエンス事始め -- 科学データは誰のものか (3)) 。科学, 93: 82-88 (2023年 1月号) [2023-01-11 追記].


第1回にひきつづいて 1957-58年に実施された国際地球観測年 (IGY) の件で、おもに南極観測を話題にしていて、人工衛星のことにもふれている。いずれにしても、アメリカ合衆国 (USA) と ソヴィエト連邦 (ソ連) のそれぞれの政権のおもわくと、科学者のおもわくが複雑にからみあっている。

IGY のデータをあつめて公開するしくみとして World Data Center(s) (WDC) が構想された動機として、有田さんは、ソ連の人工衛星関係の秘密主義に対して情報をひきだそうとした USA (政府) の意図を重視している。

【なお WDC の日本語名称が「世界資料センター」であることが指摘されている。1980年代に WDC を知ったわたしは「データセンター」と言ってしまうくせがあるが、1950年代ならば、あつめられた物はおもに紙やフィルムだったので、「資料」のほうがもっともだ。】

IGYと人工衛星とのかかわりについて、わたしが知っていることは、[2016-11-08 地球温暖化と人工衛星とのかかわり] の記事に書いた。USA の政権が人工衛星の用途として軍事偵察を考えていたがさきに地球観測をおもてに出した、という話は、そこで文献としてあげた Gavaghan の本の Prologue の部と、つぎの Dickson の本の第4章「An Open Sky」で読んだことである。

  • Paul Dickson, 2001, paperback 2003: Sputnik -- The Shock of the Century. New York: Berkley (a division of Penguin Putnam Inc.) ISBN 0-425-18843-4.

IGYの南極観測には、ソ連も参加し、観測データの共有体制がくまれ、科学の普遍性が強調された。ただし、有田さんの記述によれば、企画段階の1955年ごろ、企画者のひとり (USAの人) はソ連を排除して少数の国で実施しようとしたが、他の企画者 (西ヨーロッパの人) によるソ連をふくむなるべく多数の国の参加をもとめる方針がかろうじて勝った、ということがあったらしい。

- 2 -
ここから、2022-09-08の記事で予告したように、体系的というよりは断片的になるが、この話題に関連してわたしが知っていることを書きだしておくことにする。

- 2a -
南極についてのIGY以後の動きについては、わたしはつぎのものを読んだ。

- 2b -
IGYや極地研究の国際協力に関連して、読む時間をとれていないが、ともかく本の所在をたしかめたものをいくつかあげておく。
これはIGYの同時代の資料。

  • Hugh Odishaw and Stanley Ruttenberg eds., 1958: Geophysics and the IGY (Proceedings of the Symposium at the Opening of the International Geophysical Year). Geophysical Monograph No. 2. American Geophysical Union.

こちらは 50年ほどたって科学史的にふりかえったもの。

  • Roger D. Launius, James Rodger Fleming and David H. DeVorkin eds., 2010: Globalizing Polar Science: Reconsidering the International Polar and Geophysical Years. Palgrave Macmillan. ISBN 978-0-230-10533-1.

- 2c -
地球観測データとその提供・共有ポリシーについて、わたしはとくに 1990-2000年代に同時代の資料をあつめた。まだ読んでいないものや、何が書いてあるかわすれたものが多いのだが、紹介できるものからすこしずつ紹介していきたい。

つぎの本は読書ノートを書いたのでその論点はおぼえている。

  • Renée Marlin-Bennett, 2004: Knowledge Power: Intellectual Property, Information & Privacy. Boulder CO USA: Lynne Rienner. [読書ノート]

1989年ごろに WDC (制度) の状況を記述した目録を手にいれた。その後、おいかけていないが、当時の状況についての公式資料ではある。

  • ICSU Panel on World Data Centres, 1987: Guide to the World Data Center System. Part 1. The World Data Centers (General Principles, Locations and Services). 91 pp.
  • ICSU Panel on World Data Centres, 1989: Guide to the World Data Center System. (つぎのものの合本)
    • Part 2: Ionosphere. 34 pp.
    • Part 3: Geomagnetism. 44 pp.
    • Part 1(a): Updates, Corrections and Additions to Part 1. 43 pp.