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わたしを束ねないで

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも しめしません。】

【この記事は個人的おぼえがきです。専門的知識を提供するものでも、社会に向けて意見をのべるものでもありません。】

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わたしの学年は、高校の 1973 年からはじまった あたらしいカリキュラムの最初の学年だった。わたしのかよった普通科の高校では、1年上までの人は全員ほとんど同じ授業を受けていたのだが (芸術科目は選択があったはずだが)、わたしの学年からは選択科目がふえた。芸術科目については、音楽、美術、書道からの選択で、1年生のとき「音楽 I」をとった人は、2年生で「音楽 II」をとれるのだった。

「音楽 II」の時間のなかで、生徒たちに自主的なこころみをさせる時間があった。わたしは作曲をしてみたいと思った。そう思った人たち(女子1人、男子3人だったと思う)でグループになったのだけれど、どのように作曲したいかはまちまちだったので、各自それぞれ曲をつくって、演奏だけいっしょにやることになった。(授業をおしえるたちばから考えてみると、各自の自己流でよかったかは疑問なのだけれど。)

わたしは、詩として発表されているものに曲をつけて歌にしてみたかった。世のなかにはいろいろ歌があったけれども、自分の思いにあうものがすくないと感じていた。

しかし、わたしは詩をあまり知らなかった。本屋に行って、たくさんの詩をあつめた文庫本を1冊買って、歌にしたくなるものをさがしてみた。その本はいまも家にある。1974年の新刊本だった。おそらく酸性紙で、各ページの周辺部分はかなり茶色くなっているが、本文の部分の紙面は まだ黒インクの文字を読むのにさしつかえないぐらい白っぽい。

  • 小川 和佑 編, 1974: 日本抒情詩集 現代 (潮文庫 112D, 緑46D)。潮出版社, 367 pp.

歌にしたい詩はなかなかみつからなかった。主題が、恋愛であるものと、亡くなった人への追悼であるものは、わたしの意欲がむかわなかった。ことばが、音として聞いてわかりそうもないものは、さけたかった。

ひとつだけ、曲をつけたくなるものがあった。新川 和江 の「わたしを束ねないで」だった。初出は 1968年に出た詩集『比喩でなく』だそうだ。

これにすでに曲がつけられているかどうか、積極的にはしらべなかったのだけれど、こころあたりはなかった。木下 牧子 さんの曲も、林 光 さんの曲 ([2012-01-07の記事] でふれたように、初演を聞いたのだけれど、わたしの印象にはのこらなかった) も、このときよりはあとに発表されたものだから、たぶん、まだなかっただろうと思う。

- 2 -
詩を読むだけで、メロディーの はじめの部分を思いついた。わたしの個人言語のアクセントはだいたいNHKが標準としているのと同じなので (気づいたかぎりでちがうところは [2012-10-23の記事])に書いた)、ことばとして読んだときの音のあがりさがりにあわせてメロディーをつくることにためらいがない。もしちがっていたら、だいぶ まようだろうと思う。

メロディーだけでなく、ハーモニーをつけたい。わたしの能力ではしっかりした多声部の合唱をつくることはできそうもなかったが、同じリズムで和音になる音をかさねるぐらいはできるだろう。和音をきめていくのには楽器が必要だ。家には縦型のピアノがあった。わたしはピアノをならっていたのだけれど、練習をあまりしないので上達せず、ふつうの意味でのピアノ伴奏をする能力はなかった。ギターもやってみたことがあるのだけれど、和音のフレットのおさえかたを身につけるまえにあきらめてしまった。しかし「コード進行」の本を読んで、ピアノで音を確認することはしていた。わたしにとってピアノは「コード楽器」だった。ハ長調とイ短調をきれめなくまぜたコード進行がこのみだった。

詩は5つの連からなっていて、同じ形をくりかえしてはいるのだが、ことばの拍数はちがう。できれば全体に曲をつけたかったが、どういう構成にするかは まよった。記憶からは消えていたが、手もとの文庫本に、鉛筆の書きこみがのこっていて、連ごとに「 (1) (2) (1)' (3) (1)''」と書いてある。そのように曲想をかえようと思ったにちがいない。 しかし、その後、同じ曲想で1番から5番までくりかえすことにした。拍数のちがうところや、重要な語のアクセントがちがうところは、リズムやメロディーをかえて対処する。

第4連の「わたし」は あきらかに女性なので (それ以外のところの「わたし」は女性でなくてもよいのだけれど)、授業の発表会のときには女子のグループメンバーに歌ってもらうことにした。発表の時間も練習の時間もかぎられていたから、発表したのは1番 (第1連) だけだった。2番以後の楽譜をつくったかどうかもおぼえていないが、あたまの中ではだいたいできていた。

- 3 [2021-02-06 改訂] -
記憶している曲を、Lilypond で書きだしてみた。

楽譜を1番から5番までそれぞれつくった。それぞれの最初の2小節は伴奏で (ピアノをコード楽器としてつかうことを想定している)、第3小節から歌がはじまる。

このブログ記事を書いた 2020年12月30日には、わたしは、Lilypond でコードネームを書く方法はいちおうわかったのだが、適切な位置に書く方法を習得していなかった。2021年2月5日になんとか習得したので、1番 (詩の第1連)のぶんだけコードネームをつけてみた。高校生のとき考えたものを正確におぼえてはおらず、あらためてつけたのだが、基本的には変わっていないと思う。ただし、たとえば Em7 にするか E7 にするかなど、自信のないところもある。しかも、いま家にはピアノもギターもなく、パソコンで音楽を演奏する道具もそろえていないので、和音を実際に確認できていない。家に和音を出すことができる楽器は (ずっと手をつけていないが) あることはあるし、 Lilypond で MIDI ファイルをつくってパソコンのスピーカーで音を出すことは (まだためしていないが) できるはずだが、おっくうになっている。音を出してみたら、変えたくなるところがあるかもしれない。

コードの例をあげておくと、前奏と歌いだしは C 、楽譜の1行めの最後と2行めの最初の小節は Am、歌の最後は G7 だ。G7で「停止」しているが、それは C にむかう途中と感じられるので、これはハ長調の曲だと思っている。

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Lilypond の入力としたファイル [tabanenaide1c.ly] 【URLは暫定です。】

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