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梅はさいていたか (2)

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたか、かならずしも明示しません。】
【[2020-11-15] 昨日は自分の[2019-04-04の記事]へのリンクを書きまちがえていました。修正しました。】

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2020年11月10日、気象庁が、生物季節観測の種目を2021年1月から おおはばに へらすと発表した。

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これについてわたしはとりあえず Twitter 上で次のようなことをのべた。ひとまずそのまま引用しておく。できればあらためてそれを主題とする記事を書こうと思っている。

気象庁が生物季節観測を大幅縮小するという。気象庁はものごとを長期つづける役所だが、あたらしい技術の仕事も必要だ。また、生物季節はむしろ気象庁がはじめた当時になかった環境省の分野だ。かぎられた人員での業務の重みづけからも、都市域の生物相の変化からも、縮小はもっともだと思う。

しかし、これまでにとられた貴重な記録をなくさず、みんなが参照できる形にしてほしい。また、関心のある人がなるべく過去の気象庁の観測と比較可能な形で観測ができるように、マニュアルを整備し、できれば講習をしてほしい。気象庁の人・外の研究者・ボランティアが協力して整備できるとよいと思う。

残念ながら、わたしは生物季節の専門知識はない。(フェノロジーがだいじだ、農事暦がだいじだ、と言っているけれども。) だから生物季節観測のデータやマニュアルの整備の主役にはなれない。しかし主役になろうという人がいれば、応援はしたい。

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気象庁のウェブサイトには、「生物季節観測の情報」というページがある。https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/index.html

2020年11月10日に見たところ、そのページには、さくらを別として植物4、動物5の観測種目の「観測方法」(図入り文書)と「最近のデータ」(2019, 2020年の各地点での日付)と、植物41、動物24の観測種目の「生物季節観測値 (種目別累年値)」(1953年以来の全国の地点での毎年の日付と平年値・極値)の情報がある。

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2019年4月4日、わたしがこのブログに [2019-04-04 梅はさいていたか]の記事を書いたときには、気象庁(本庁)のウェブサイトで、梅の開花の日付のデータを見つけることができなかった。わたしが見おとしただけかもしれない。あるいは、2019年当時の気象庁のそのウェブページには (URLからのわたしの推測だが) さくらの開花の情報だけがあって、そのほかの観測種目はそのあとで追加されたのかもしれないと思う。

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上記の気象庁ウェブページのリンクさきのファイルから、1953年から2020年まで (ただし1968年はデータ欠損)の毎年の、福岡での梅の開花の日付を知ることができる (2019年まで「種目別累年値」、2020年は「最近のデータ」にある)。

これを、日付を横、年を縦にとった散布図の形で作図してみた。(PDFファイルやウェブページを見ながら表計算ソフトウェアのワークシートに手入力し、タブくぎりテキストファイルで書き出して、Rで作図した。) グラフの横軸は1月1日を1としたとおしの日付である。ただし、2月は29日まであるとして日付をかぞえた。 (28日と29日を区別してとおしの日付を計算するか、みな28日にしてしまうほうがふつうなので、あとでやりなおすかもしれない)。

福岡での開花日付は、だいたい10 (1月10日)から45 (2月14日)までのあいだにひろく分布しており、さらにその範囲からはみだすばあいもある。

R の hist を単純につかってヒストグラムをつくってみた。[2020-11-16 追加]

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大宰府と福岡の気候のちがいを考慮に入れる必要がある。最近は、気象庁による福岡 (気象台) と大宰府 (アメダス観測点)の観測値があるので、そのうちの、気温の日別平年値を見ることにする。

データは、気象庁ウェブサイトの「ホーム > 各種データ・資料 > 過去の気象データ検索」http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/ から、つぎの手順で得ることができる。

  • 地点の選択
    • 都府県・地方を選択 ... 福岡を選択する
    • 地点の選択 ... 福岡、大宰府を一度にひとつ選択する。
  • 年月日の選択
    • 年、日は指定せず、月を、1月、2月、3月を一度にひとつ選択する。
  • データの種類
    • 「1月の日ごとの平年値を表示」を選択する。「1月」のところは選択した月によって変わっている。
    • 表示されたページをブラウザの機能で保存する。Windows上のFirefoxならば、右クリックから「名前を付けてページを保存」。

日別平年値とはどういうものかについての説明は「 ホーム > 知識・解説 > 気象の観測 > 気象観測統計の解説」http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/kaisetu/index.html からリンクされた「気象観測統計の解説 第5章 平年値」のPDFファイルの文書に書かれている。藤部 (2014)の6.1節でも紹介されている。

  • 藤部 文昭, 2014: 統計からみた気象の世界 (気象ブックス 041)。成山堂書店。[読書メモ]

2月は29日までデータがあるので、ここでは仮に2月は毎年29日まであるとみなして、1月1日からのとおしの日付を計算した。

1~3月の日平均気温の日別平年値の時系列はつぎのようになる。作図はLibreOffice Calcのグラフ機能(「散布図」)によった。

どちらの地点でも、気温の極小は1月末ごろだ。そして、大宰府の気温は福岡よりも 1~1.5℃低い。

もし、開花に適した時期を、気温上昇中の傾きで読みかえてよいとすれば、大宰府は福岡よりも10日から15日ぐらいおそいことになる。しかし、福岡での開花は気温の極小よりも前のこともあるので、この理屈はかならずしもなりたたない。

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わたしは、[2019-04-04の記事]を書いたとき、つぎのように推測していた。ただしその根拠は不明確だった。「もし気候も梅の品種も今と同じだとすれば、大宰府で、グレゴリオ暦換算2月8日ごろに、梅の花がさいていることはじゅうぶんありうる (異常ではない)。」

今回データを追加したことによって、わたしの推測はかわらず、わたしの主観としてはいくらか根拠が強化されたと思う。しかし、根拠を客観的にしめすことはまだうまくできていない。残念ながらわたしはこの件を追求しつづけることができないが、おりにふれてまた考えてみたい。