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なかぐろ、ハイフン、空白

【この記事は まだ 書きかえることがあります。 どこをいつ書きかえたか、必ずしも示しません。】

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日本語を漢字かなまじりで書くときには、わかちがきの習慣がない。わかちがきの習慣のある言語で、空白でくぎられたそれぞれの文字列を仮に word と呼ぶことにする。わかちがきの習慣のある言語では、ひとつの人名などの固有名が、複数の word からなっていることがある。それを日本語の中にもちこんで、かたかなで書こうとしたとき、わかちがきの構造をどう残すかが問題になる。

一体の固有名だという意識が強い場合は、空白なしにつめてしまうこともあるだろう。

わかちがきの構造をそのまま、空白をはさんで表現することも考えられる。わたしはこれをすすめたい。しかし、現実の日本語圏ではあまり見られない。多くの人が、空白をはさんだかはさまないかの区別を意識しないからかもしれない。

多く見られるのは、なかぐろ(「・」)を使うことだ。

ところが、なかぐろは、列挙にも使われる。なかぐろを含む人名を列挙するとき、列挙もなかぐろであらわしたのでは、人数がわからなくなる。

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アルファベットを使う言語では、ハイフンで語をつなぐ構造もある。

日本語の中で固有名をかたかなで書くとき、アルファベットのハイフンを意識的に転写する場合は、二重ハイフン(「=」)を使うことが多い。(もとのアルファベット表記で二重ハイフンを使っている場合もいっしょになってしまうが、こちらの件数は少ないだろう。)

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ところが、最近の高校の世界史の教科書では(複数の会社が出版しているが、いずれも)、ひとつの固有名の内部では、空白のところも「=」にしている、という話があった。なかぐろは固有名を列挙するときに使うので避けたかったらしい。

そのことを確認しようとして、教科書ではないが、それと共通の材料を編集したという『新 もういちど読む 山川 世界史』の本を見てみたが、言われるようになっていない。複数の word からなる人名の word間はほとんど なかぐろ だ。この本は教科書とは別の編集方針によっているか、あるいは句読点に関する編集方針がかわる前の教科書にもとづいているのかもしれない。

(なお、『新 もういちど読む』の本の索引の人名で、二重ハイフンを使っているものが少しだけある。そのうち「サン=シモン」はSaint-Simonだが、「サン=マルティン」(ラテンアメリカの独立運動家)はSan Martin、「ド=ゴール」はde Gaulleのはずで、この本の編集方針でなぜ なかぐろ にならなかったのかわからない。もしかすると、執筆者ごとの不統一が残ってしまったのだろうか。)

文献

  • 「世界の歴史」編集委員会 編, 2017: 新 もういちど読む 山川 世界史。山川出版社, 333 pp. ISBN 978-4-634-64090-0.

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なかぐろ の(広い意味の)列挙の働きには、単純な列挙のほかに、「A・B間」などの構造をつくる場合がある。

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(1970年代に得た知識だが) 中国語では(漢字で横書きの場合)、句読点の「、」と「,」を区別する。日本語の読点(「、」)と同様な働きをするのはコンマ(「,」)のほうだ。「、」は列挙に使うのだ。これは単純な列挙だ。

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これから、どうしたら、まぎらわしいことを少なく、読みやすくできるだろうか。

わたしは、日本語にも空白によるわかちがきを導入するべきだという意見だ。そうすれば、英語で空白のところは日本語でも空白でよい。ハイフンはハイフンで受ければよいと思う。なかぐろは列挙に使えばよいと思う。「A・B間」は「A--B間」のほうがよいかもしれない。ここで「--」はダッシュで、便宜上ハイフン2つで示しておいた。ダッシュとハイフンの区別は、フォントによってはむずかしいので、規則にしないほうがよいかもしれないと思う。

わかちがきを導入しない場合にどうしたらよいかは、よくわからない。

- 6 [2017-11-26 追加] -
今の日本語圏には、外来語でない日本語の単語を書くとき、ハイフンを使う習慣はない。しかし、わたしは、複合語の組み立てを明確にするために、漢字要素どうしの比較的強い結びつきは続けて書き、比較的弱い結びつきをハイフンで示すという書きかたを奨励したいと思うことがある。(なかぐろではまずいと思う。) ただしこれは、ハイフンとダッシュとが区別できることが前提だ。

- 7 [2017-12-03 追加] -
日本語での なかぐろ の使いかたのうちに、英語などでの単語を頭文字だけあるいは途中で省略するときに使うピリオド(「.」)に対応するものがある。ただし、この場合の なかぐろ は、連語の途中ではよく使われるが、連語の最後に出てくるのは例外的だ(英語からの翻訳ならば最後のピリオドは対応物なしに省略されてしまう)。わたしは、日本語でも横書きならば、ピリオド(「半角」のピリオドとそのあとに「半角」の空白)で表現するのがよいと思っているが、これは日本語圏での習慣になっていないので、妥協して なかぐろ を使うこともある。