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研究所の電子メール用ソフトウェアについての意見

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

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2016年11月、わたしの勤務している法人の情報システム管理部門から、コンピュータセキュリティの確保のために、所内の電子メールのクライアントソフトウェアを制限したいという提案があり、それに関する職員の意見の募集があった。

わたしはちかぢか任期切れで当法人を去る予定なので、いまさら意見を言う立場ではないとも思ったが、来年度から来る人は意見を言う機会がないことを思いなおして、意見を書き送った。

ここにはその主要部分を、固有名などをやや一般的に書きかえて再録する。

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当法人の職員はさまざまなOSのパソコンを使っています。職場のメールを使うことのできるOSが限定されることは避けてほしいです。

その目的の最小限は、ウェブメールを使うことで満たされます。しかし、おそらく所内のメールサーバーの負荷分散のため、各ユーザーのマシンでメールを読むことも奨励したいでしょう。

メールソフトウェアを、セキュリティが保証できるものに限りたいという立場はよく理解できます。

しかし他方、当法人の研究職は、多様な経歴をもった人が来て、その多くは任期が終わればまた別のところに移っていく人です。そのうちには、自分が熟練した使いかたを続けたい人もいるでしょう。嫌いなメールソフトウェアを使わされることがわかっていたらこの法人には応募しなかった、と、勤めはじめてから後悔する人もいるでしょう。

コンピューターセキュリティも重要ですから、制限するなとは言いません。コンピュータ能力の高い人は、セキュリティをこわす能力も高いかもしれません。したがって、制限をかけることは妥当と思いますが、それ以外のものを使いたいという要望があれば、検討して対応する余地を残しておくべきと思います。検討の結果ダメ、あるいは(システム管理部門に)検討の能力や作業時間がないので残念ながら認められない、ということはあってよいと思います。また、当法人の(とくに任期つきの)職員公募の際には、募集要領に書くわけにもいかないと思いますが、面接の前後には、どのようなルールがあるか明示されるようにするべきだと思います。

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次に、わたし自身の経験について述べます。

わたしは、1980年代から、おもに大型計算機を使っていましたが、電子メールについては、1980年代途中からUnix上のものを使いはじめ、1990年ごろには日本語のものを含めてそちらを主にするようになり、1990年代には大学教員として学生に使いかたを教えたこともありました。

Unix上のメールソフトウェアとしては、MH を使ってきました。これは、inc, send などの複数のコマンドからなります。わたしが重視した特徴は、各メッセージがそれぞれ(Unixの)ファイルとなり、UnixのディレクトリがそのままMHのフォルダとなって、メッセージを分類管理できるようになっていたことです。また、同じUnixマシン上でsendmailなどのデーモンが動いている場合も、他のメールサーバーからPOPで取得しSMTPで送る場合も、同じユーザーインタフェースで使えることも重要でした。ただ、添付ファイルは、受信の際の切り分けは設定ファイルを書けば自動化できましたが、送信の際に添付する作業はちょっとめんどうでした。

わたしは1997年ごろから2010年ごろまでは、ノートパソコンにLinuxを入れ、事務書類も(Microsoft Office必須のもののほかは)その上で作業してきました。メールはMHを使い続けてきましたが、その期間の最後のころ、添付の便宜も考えて、Unix系とMS Windowsの両方で開発されていて、MHと互換のファイル構成を使っている、という基準で選んだSylpheedというHiroyuki Yamamoto氏によるオープンソースソフトウェアに乗りかえました。

2011-2012年度、わたしは別の法人に出向しておりました。そこは事務職員主体の職場なので、原則としてWebメール専用でした。職場のネットワークに個人のパソコンをつなぐことは許されておらず、職場のパソコンにインストールするソフトウェアも制限されていました。ただし、職員の出張や外勤も多いので、所外で自分のパソコンなどから読み書きするために、公用のメールを個人が契約したプロバイダなどのサーバーに転送することは許されていました。

わたしは、自分のパソコンでは、公用・私用ともに、Windows上のSylpheedをおもに使うようになりました。2013年度に当法人にもどってきてからも、その習慣が続いています。

個人的には、Sylpheedを使い続けることを認めてほしいと思いますが、それがだめならば、残り少ない期間であれば、公用のメールはWebメールさえあればよい、と割り切ることができます。

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ここから、今後の当法人のための意見です。

事務職の人や、技術職・研究職でもソフトウェアにこだわりのない人には、法人としてメールのソフトウェアを指定するのが、よい策でしょう。

しかし、技術職・研究職のうちには、ソフトウェアにこだわる人もいるでしょう。そういう人の志向は、セキュリティ上の問題のたねにもなりうるので、無制限に認めるわけにはいかないでしょう。他方、ソフトウェアを(とくに事務職向けと思われやすいものに)限定すると、当法人という職場がいやになる人も出てくるでしょう。

システム管理部門の、能力や時間を含めた力量から、セキュリティ判断不可能なものは、あきらめてもらい、判断可能なものについて、判断の結果として、許容するべきだと思います。

わたしが許容してほしい類型は、オフィス仕事もUnix系OS (LinuxやBSD系など)でやろうとしている人びとです。原案にもLinuxで動作するメールクライアントが含まれているので、これで満足できる人もいるでしょう。しかし、彼らがメールに「もっとUnixらしい」ものを使いたいならば、システム管理者が理解できる限りは、認めてあげてほしいと思うのです。ただし、Unixらしいソフトウェアには、自由度が大きく、したがってセキュリティ上の危険も大きいものもあるでしょう。危険があると判断されたものは許容しない、また、システム管理者に判断できない(判断する時間がとれない)ものも利用をがまんしてもらう、というルールでよいと思います。