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パーセント・ポイント、任意の単位を数えることばがないこと

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

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現代の日本語で「ポイント」ということばはさまざまな使われかたをする。(試験の点数は「点」であってあまり「ポイント」とは言わないと思うが、スポーツの得点については言うかもしれない。また、商業で売り手が買い手におまけを提供する際に、数量の単位になっている。)

しかし、テレビのニュースでアナウンサーが読んだ原稿に、数値に続く形で「10ポイント」のような形で出てきたら、たぶん、これから言う、比率をあらわす「パーセント」に関連した意味だと思う。

なんの比率でもよいのだが、たとえば、世論調査で、ある党の支持率が、前回(たとえば1年前)には20%で、今回には30%だったとする。ここで、「今回は前回よりも10%ふえた」と表現されることが、昔(わたしの記憶がまちがっていなければ1980年代まで)はあったと思う。しかし、今では「10ポイントふえた」という。これは、社会調査などの報道を聞きなれた人にはわかるだろうが、大部分の人にとって意味不明だろうと思う。

英語ならばどう表現するか、わたしはまだ確認していないが、たぶん「10 percent point」だろう。日本語でそれを外来語として使うならば「10パーセントポイント」というべきだが、それでは長すぎると感じられて「ポイント」になってしまったのだと思う。

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これを「10パーセントふえた」のように言うのを避けるようになった理由はわかる。

世論調査の例で、たとえば、(推定された)支持者数が 2千万人から3千万人にふえたならば、支持者数は1.5倍になったわけであり、増加割合[注]で表現すれば、50%ふえたことになる。

  • [注] これを「相対増加率」と言う人もいると思う。実はわたしはそう書こうと思ったのだが、[2015-05-07の記事]でとりあげた「相対増加率」の「率」は、英語で言えばrateで、単位時間あたりの量をさしていた。今の記事で扱っているのは、単位時間あたりでない、別の数量だ。同じ語を別の意味で使うのは避けることにする。

支持率(これは単位時間あたりの量ではない。たぶん有権者のうちの支持者の割合[の推定値]だろう)が 20%から30%にふえた場合も、支持率の増加割合で表現すれば、50%ふえたことになる。ただし、実際に同じ文で、支持率をパーセントで示しながら、支持率の増加割合もパーセントで示すのは、とてもわかりにくいので、避けるだろう。しかし、支持率の数字を省略して単に「支持率が50%ふえた」と述べることはあるので、「10%ふえた」は「まちがい」だと言ってよさそうだ。「パーセント単位で示した支持率の数値が10だけふえた」ことを述べるには別の表現が必要であり、苦しまぎれで導入されたのが「ポイント」だったにちがいない。

【この例で「今回の支持率は前回のよりも10%だけ多い」と言うならば、理屈としてまちがってはいないと思う。しかし、もし増加割合を述べていると思われるとまちがった数値が伝わってしまうので、この表現もやはり避けるべきだろう。】

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一般に、「いま注目している表・グラフに表示されている単位で10」のようなことの、短い表現がほしいのだが、日本語で定型として確立したものはないようだ。「10単位ぶんふえた」のような表現もなじみがないものと感じられる。何であっても「ポイント」を使って「10ポイントふえた」のように表現すると決めてしまって、しばらく使い続ければ慣れるだろうか? もっとよい語があるだろうか?