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「地球温暖化の見通しはウソではない -- 原子力推進のために使われることはあるが」

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

この記事と同じ(ただしカギカッコなし)表題の文章が、左巻健男さんが編集長となっている雑誌『RikaTan / 理科の探検』(ウェブサイト http://www.rikatan.com ) の2016年12月号に、陰謀論に関する特集の記事のひとつとして、出版された。

  • 増田 耕一, 2016: 地球温暖化の見通しはウソではない -- 原子力推進のために使われることはあるが。 RikaTan / 理科の探検 (SAMA企画), 2016年12月号, 86 - 91. [著者によるHTML版(アクセス制限あり)]

記事の節ごとの見出しは次のとおり。

  • 地球温暖化はホントだという主張の意味
  • 宣伝材料はウソのこともホントのこともある
  • 気候とは? 気候の変動とは?
  • 気候はエネルギーの収支によって変動する
  • 地球温暖化は原因のほうから認識された
  • 気温上昇が止まったと見えても地球温暖化は続く
  • IPCCはどのように政治の影響を受けているか
  • 原子力を進めたい人が温暖化を重視する動機
  • 原子力推進者の一例、ワインバーグについて

このブログに次の記事として書いた材料をもとに、論点をまとめなおしたものである。

最初の部分だけ、引用しておく。

地球温暖化はホントだという主張の意味
 
「地球温暖化はウソだ」と言う人がいる。わたしは気候の専門家として「地球温暖化はホントだ」と言いたい。しかし同じことばを使っても意味が違っていると議論がすれちがう。わたしが「地球温暖化はホントだ」というのはどういう意味なのか説明することから始めたい。
 
今後約百年間の気候について、「人間社会が化石燃料の利用による二酸化炭素の排出を続ける限り、気候の変化はおもにそれに支配され、世界平均気温は上昇するだろう」という見通しを持っている、ということだ。
 
ただし、ここでいう「見通し」は、精密な予測ではない。人間が今後化石燃料をどれだけ消費するかなどの社会に関する不確かさがあるし、温度が上がると雲がふえるか減るかなどの自然界に関する認識の不確かさもある。今から百年後までの温度上昇幅は、最近の推定による代表値の2倍や2分の1になるかもしれない。しかし、10倍や10分の1になる (あるいは負になる) ことは考えにくいのだ。
 
また、たとえば、太陽からくる電磁波(光)が17世紀の「マウンダー極小期」と呼ばれる時期よりも激しく減るとか、火山の巨大噴火(インドネシアのタンボラ火山の1815年の噴火なみかそれ以上のもの)が数年おきに複数起こるとかすれば、それが二酸化炭素による温室効果強化に勝って、寒冷化が起こるかもしれない。しかしそういうことは予測不可能だし、確率が低いと予想されるので、例外として扱い、将来見通しは例外を除いて論じるのがふつうなのだ。