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授業「気候変動(地球温暖化)を理解する基礎となる気象学の知識」のためのページ

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】

このページは、2016年10月16日に東京農工大学でわたしが担当する授業について、受講者・授業関係者からの質問や関連情報を、ブログへのコメントという形で受け取るために用意しました。

受講者・授業関係者以外からのコメントについては、わたしが受講者に有用と判断したものは受けつけますが、そうでないものは消しますので、ご了解ください。

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[2015-10-21補足]
授業で話したことの要旨を箇条書きで述べてみる。

  • 気候の変化にはいろいろなとらえかたがあり、文献を読むときはその著者のとらえかたを理解する必要がある。ここでは(定義ではなく例として)、30年平均の気温がその前の30年平均の気温と明らかにちがうような状況を気候変化ととらえよう。
  • 気候の変化のしくみを考えるために「気候システム」の考えが発達した。気候システムは、大気、海洋、雪氷圏、陸面(陸水、陸上生態系)などの部分システムからなる。気候システムは、物質・エネルギー循環系であるとともに、フィードバックシステムである。なお、大気の成分のうち水蒸気の濃度(比湿)は気候システムの内部変数とするが、二酸化炭素などの濃度はシステム外からの強制として扱う。(温度などの気候変数から濃度への因果連鎖の強さがちがうのでちがう扱いをする。)
  • グローバル(全地球規模)の気候の変化のすべてではないが主要なものは、気候システム全体のもつエネルギーの変化とともに起こる。気候システムのエネルギー収支は太陽放射の吸収と地球放射の射出からなる。グローバルの気候を変化させる主要な要因はこのどちらか(両方のこともある)を変えるものである。
  • 気候システムには、温度が高いほど出て行く地球放射が多いことによる、基本的な負のフィードバックがある。したがって、気候の変化を、準定常状態をたもちながら徐々に変化していくというとらえかたができる。
  • 大気の成分のうち3原子以上の分子が、赤外線を吸収・射出する働きをもつ。対流圏では基本的に上ほど温度が低い温度勾配があることを前提として、赤外線を吸収・射出する成分がふえることは、(同じ気温に対して)地球放射が出ていきにくくなる働きをするので、(ふろおけの水の出口が詰まりぎみになった場合のように)地上気温を高いほうにずらす働きをする。
  • 数十年から百年の時間規模を考えた場合、気候システムへのおもな強制としては、自然起源のものとして、太陽の変動と火山起源のエーロゾル、人為起源のものとして、燃焼起源のエーロゾルと温室効果気体がある。
  • 水蒸気の温室効果は正のフィードバックとなる。雪氷の太陽光反射率が大きいことも正のフィードバックとなる。雲は太陽光反射と温室効果の両方にきき、また温度によって雲量(雲に覆われた面積比)がどう変わるかがまだよくわからないので、正・負のいずれにきくかわからない。
  • 温室効果気体濃度の変化に対して、地上気温は、海洋の表層(深さ数百メートルまで)の水温とともに、数十年遅れて応答する。
  • 今後約百年の気候変化の予測型シミュレーションがおこなわれている。その結果は、世界平均地上気温で見ても、幅をもつ。幅の原因の約半分は濃度シナリオのちがいであり、それは将来の人間活動による二酸化炭素などの排出量が政策などによって変わりうることを反映している。残りの約半分は気候モデルの不確かさであり、おもに雲のフィードバックに関する知見の不確かさを反映している。