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はじめてのKindle経験

わたしは、学術論文はほとんど電子版(PDF)をパソコン画面で読み特別なときだけプリントするようになったのだが、本についてはほとんど紙のものを買ってきた。電子書籍のうちにはせっかく買っても売り手が廃業したら消えてしまうものもあるので、まだ全面的に切りかえる気になれない。しかし、紙の本については、置く場所の不足もあるがむしろ、せっかく買った本をどこに置いたか管理できないことによる不便がますます強まっている。また、紙の本ではその中の文字列の検索ができないのも不便だ(著者や出版者が索引を作ってくれて、その観点が読者の関心にも合っているならばよいのだが)。それで、電子書籍にしたほうがよいと思うこともふえてきた。

出版社が直接、コピー防止の細工がない(だれに売ったかのスタンプはあってもよい) PDFまたはePub形式を出してくれるところはそれに乗る。(ePubのほうが慣れれば読みやすそうだが、わたしの慣れのつごうで両方あればPDFを買っている。)

その他は、どの会社のサービスに乗るか迷う。日本語圏についてはまだ決断ができない。英語圏AmazonKindleが大手で、ほかも使うとしても、これをはずせそうもない。しかしKindleは専用端末機を想定している。わたしは、Microsoft社に依存したくはないのだが、おもに通信機能のつごうで、OSとしてWindows 7がはいったノートパソコンを使っている。ノートパソコンに加えて専用端末機を持つのはめんどうだ。

amazon.co.jpKindleのところを見ると、専用端末機のほか、iOSAndroid用のソフトウェアがあるが、Windows用は見あたらない。

ネット検索すると(その裏ではGoogleのエンジンが動いているはず)、まず、Windows上でAndroid仮想マシンを動かし、そこでAndroidKindleアプリを動かす方法があることがわかる。しかし仮想マシンはいろいろ複雑なことがあるので避けたい。

次に、softonic.jp というところにKindle for PCソフトウェアダウンロードの日本語ページがあることがわかった。ただし、Kindle for Windows 8は日本からはダウンロードできないそうだ。Windows 7 対応のKindle for PCはダウンロードでき、インストールもできるが、動かしてみると何も起きない。タスクマネジャーを見ると、黙って裏で動いているわけでもないようだ。やはりAmazonは日本語圏でWindows上でKindleの本を読もうという人のことを考えてくれないのだろうか。あるいは、Softonic経由で手にはいったソフトウェアはこわれていて、動かないものか、あるいは変な動作をしていわゆるウィルス対策ソフトウェアによって止められるものになっているのだろうか? (わからないまま。)

amazon.com のほうのサイト内をさがしたら、Kindle for PCのダウンロードページがあり、「実行で解凍」型のアーカイブファイルがあった。Softonicからダウンロードしたものと比べると、ファイル名は同じだったが、ファイルサイズは大きかった。これは、日本語Windows 7で、インストールも、起動もできた。日本語の電子書籍には対応していないらしいが、メニューやメッセージは日本語になっている。

このKindle for PCを起動しておいて、ブラウザ(Firefox)からamazon.com につなぎ、Kindleの本を選択すると、行き先としてKindle for PCが表示される。紙の本の場合と違って、ボタンの機能が、カートに入れるのでなく、ワンクリック購入になっている。購入すると、しばらく通信して、Kindle for PCに本が追加される。

なお、購入の際、クレジットカード認証はしているはずだが、付加価値税に関する質問はなかった。電子書籍購入が「ものを買う」ことかどうかは疑問があるが、日本の法律では、少なくとも日本に住む人どうしの取引ならば消費税の対象ではあるはずだ。この場合、税制が違うところにいる人どうしの取引なので、税をどうするかは自明でないが、遠隔通信販売では税がかからず、ローカルな本屋から買うときにはかかる制度は、前者を奨励し後者を抑圧する効果を持ってしまっているように思った。(Kindle版だけに限れば売り手はたぶんAmazonだけなので、どれだけ不公平なのかを直接的に指摘するのはむずかしいのだが。)

このところ英語圏の紙の本は出版社直接またはamazon.co.jpから買っているのだが、Kindle本に限ってamazon.comとのつきあいを再開することにした。そして当面Kindleで日本語の本には手を出さないことにする。

Kindle for PCのソフトウェアが実行される際の窓の大きさはユーザーのマウス操作で変更できる。フォントサイズも変更できる。本を読む際は、ソフトウェアの占有する画面の中に文字が割りつけられて表示される(横スクロールしないと読めない部分がある、といったことはない)。つまり1ページあたりの字数は画面サイズやフォントサイズを変えると変わってしまう。欄外にページ番号が表示されるが、これはテキスト中の位置に対して固定されたものではなく動的に計算されたものなのだ。「ロケーション」というものの番号もあって、こちらがテキスト中の位置を示すらしい。今回買った4冊の本を見る限り、紙版のページ番号の情報はどこにもない。(ページ番号の情報を含むKindle本もあることはあるらしいが、まだ出会っていない。) Kindleで本の内容を読む限りでは、目次から本文各章へのリンクや、文字列検索があるので、ページ番号がなくてもさしつかえない。ただ、引用文献として使う際にページ番号が求められるときは、あらためて図書館などで紙の本をあたるしかなさそうだ。

Kindleには「ポピュラー・ハイライト」という機能がある。複数の読者がそれぞれ本にしるしをつけたところを共有できるというものらしい。今回買った本のうちに、本文中ところどころに点線の下線が表示されるものがあったが、それはこの機能がonの状態になっていたのだった。「オプション」の「注釈」の中で、この機能のチェックをはずせば、下線は表示されなくなった。