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科学技術社会論(STS)学会2014年度シンポジウムの企画

科学技術社会論(STS)学会2014年度シンポジウムの企画案については、[2013-11-17の記事]でも述べましたが、学会のニュースレターに出すために趣旨説明を書きなおしましたので、その文章をこの下にものせます。

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2014年のシンポジウムは、2014年6-7月ごろ、東京かその付近で開催したいと考えております。

主題は「人類の持続可能性にかかわる社会的意志決定の課題と、それを助ける科学・技術の役割を考える」というものです。2013年シンポジウムの主題であった地球温暖化を含む、さらに大きな問題を考えたいのです。
大きく分けて次の三つの視点が重要と思います(用語の選択は最適ではないかもしれません)。

  • 人類の天然資源利用に注目した文明史的・人類生態学的視点から見て、農業・漁獲や都市化などによる生態系改変と化石燃料(および核燃料)に依存した現在の文明は百年を越えて持続可能とは思えない。しかし単純に昔にもどることはできない。持続可能な将来像とそこへの道筋をどのように考えるか。
  • 長期的な視野をもつこととすぐ行動を始めることが両立し、地球温暖化防止のようなグローバルな課題と公害問題のようなローカルな課題の解決が両立するような、社会的意志決定(政策決定)のありかた。そこではどんな人がステークホルダー(課題当事者)としてかかわるか。科学者を含む専門家にはどのような知識提供の働きが期待されるか。
  • 持続可能な社会をつくるためにはどのような科学や技術が求められるか。(前項の意志決定を支援する科学を含むがそれに限らない。「適正技術」・「もうひとつの技術」も視野に入れたい。)その研究はどんな人によって主導されるか。それを実現するにはどのような教育や能力開発が求められるか。

もう少し個別に、次のような動きとの関係も考えたいと思います。

  • 2012年の日本で、エネルギー政策に関する国民的議論として、政策決定への熟議的方法が試みられた。ただし、そこでの争点は原子力の可否に集中する傾向があった。少なくとも放射能のリスク、地球温暖化のリスク、電力供給不足のリスクを合わせて考えることが必要ではないか。また経済成長が必要かどうかも明示的に問題にすべきではないか。
  • 国際科学会議(ICSU)、国際社会科学評議会(ISSC)などによりFuture Earthという地球環境研究プログラムが開始されようとしている。そこでは研究の過程で研究者と対等にステークホルダーが関与するべきとされる。しかし、ローカルな環境問題ならばともかく、地球規模の環境問題ではどんなステークホルダーがどのように関与するのがよいかは自明でない。

このような課題に取り組むのに、通常のシンポジウムのような数人の専門家の講演と短時間の討論とは少し違った形を試みたいと考えました。STS学会員には、必ずしもこの主題を専門的に追及しているわけではないが関心はある方が多くいらっしゃると思いますので、そのうちから有志をつのって企画チームを構成して、問題群を分担して調査する。シンポジウム当日は、企画チームのうち3人程度が報告者となって講演し、それをきっかけに全体討論をする、という形です。学会の財政が限られていますので、報告者に報酬を提供はしませんが、企画作業に必要な旅費は出す方向で準備しております。

報告者や企画チームメンバーになってくださるかたはもちろんですが、そこまで決断できなくても関心のあるかたにはメーリングリストにはいっていただいて、そこで議論しながら企画を進めたいと考えております。メーリングリストへの参加は今のところ手動にしておりますので、下記アドレスにご連絡ください。

ご連絡・お問い合わせは、sts2014symp (at) mld.nifty.com (mldはエム、エル、ディー)、または郵便等で【ここにわたしの職場の住所が書いてありますがこのブログでの引用は省略します】にあててくださいますよう、お願いいたします。