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デフォールト(default)

計算機に仕事を指示するとき、詳しい指定をすることもできるが省略することもできるようにソフトウェアを設計することが多い。詳しい指定を省略したときの動作をdefault actionという。日本語では「省略時動作」ともいうが「デフォールトなになに」(「なになに」の部分は場合による)のほうがふつうかもしれない。これがうまく設計されていると、仕事を指示する人はてまをはぶけるのでありがたい。ただし、へたに設計されていると、正しく指示するためには毎度詳しく指定する必要があり、うっかりデフォールトで使ってしまうとまずいことになる、ということもありうる。こういう計算機利用に慣れた人々は、日常会話でも「デフォールト」を使ってしまうことがある。「この顔ぶれの集まりならばデフォールトの服装はジーンズだな」のように。このデフォールトは平常であり、どちらかといえばいいことだ。

ところが、企業経営や国家財政の話では、default (日本語でも「デフォールト」ということがある)は債務不履行であり、非常事態であり、多くの関係者にとってまずいことだ。

両方の意味には、おそらく深いところに共通の根はあるのだと思う。(計算機関係の意味は「欠席」という意味から派生したもののように思われる。) しかし、明確な重なりは見あたらない。どちらかの意味に慣れてから、他方の意味で使う必要が生じた人は、いつも奇妙な感じをもちながら使うことになると思う。