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dnの反対向き

Twitterでどなたかの経験談を目にしたが、わたしにも経験がある。アルファベットの小文字の今のような活字体ができて以来、いろいろな人が経験したにちがいない。

わたしの場合は(こまごました経験の記憶にしては珍しく)いつのことか特定できる。1982年だ。修士論文に入れる図を作っていたときだった。

数量の空間分布を示す図を計算機出力で作っていた。英語圏で作られたそのプログラムは、まわりよりも数値の大きいところに「H」、小さいところに「L」という文字を示すようにできていた。高気圧・低気圧、あるいは高温(暖気)・低温(寒気)ならばこれでよい。直観的でない数量についても、数値が「高い」「低い」と表現するものならばこれでよい。

鉛直方向の流れについても、もし上昇流が正、下降流が負だったらそのままでよいと思っただろう。ところが、わたしが使いたかった図に示された数値は「p速度」という量[2012-04-09の記事参照]で、下降流が正なのだ。「Hが下降流、Lが上昇流」というのはわかりにくいと感じた。しかし、表示する文字をさしかえられるようにプログラムを改造するにはまずプログラムの中身を理解しなければならず、そのときはできなかった(1年か2年後にできた)。プリンターから出てきた紙の上に、手がきで書いた文字をはりつけることにした。

上昇流のところは「up」でよいとして、下降流のところは「down」では場所をとりすぎるのでどうしようと考えた。そのとき、試作した「up」のラベルがたまたま逆向きになっていて、「dn」と読めたのだった。この文脈で「dn」とあれば「down」の略だと思ってくれるにちがいない。たしか、それを採用したと思う。

最近Twitterで見た経験談は、模型工作でせっかく印をつけたのに上下どちらかわからなくなってしまったというものだった。上向き・下向きを文字が正しく見える向きで示すならば、「dn」と書いた向きの逆が上向きなのだから、目的は達すると思うのだが、失敗談として語られていたところをみると、それとは違う「上」「下」の区別だったのだろう。