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研究資金提供機関どうしの統合をしないのか?

[直前の記事]の続き。

検索してみると、朝日新聞の2011年12月28日の報道独立行政法人、統合で4割削減案 野田政権が幸いまだ残っていた。「野田政権による独立行政法人の整理統合案が[2011年12月]27日明らかになった」という書きだしで、具体的な発言者は示されていない。

2012年1月12日の時事通信の報道にある8機関については、昨年末の時点では、前から計画されていた防災科学技術研究所海洋研究開発機構(JAMSTEC)の2法人だけの合併が考えられていたのだ。

そのほか文部科学省関係のものとしては、大学評価・学位授与機構大学入試センター日本学術振興会日本学生支援機構の4機関を統合するという案になっている。

日本学術振興会(学振)の業務も、研究資金を提供する役割が大きな部分をしめることでは、科学技術振興機構(JST)と似ている。なぜ学振とJSTとの統合を考えなかったのだろうか。12月28日時点の案も、1月12日の案も、旧文部省系、旧科学技術庁系の中でだけ統合を考えているようだ。もっとも、学振が研究資金提供機関と見られるようになったのは、前は文部省が直接やっていた「科学研究費」の業務を引き受けるようになってからで、それ以前から続いている業務は、若手研究者の雇用を確保する「人材育成」業務や、大学教員が外国に滞在する機会を作ったり、国際研究集会を開催するなどの「国際学術交流」業務がおもで、それぞれに資金提供を伴いはするものの、研究資金提供機関とはいいがたい。JSTのほうも、文献データベースの作成・提供や、科学コミュニケーション事業(直接と資金提供の両方)もしている。だから必ずしも同類とみなすのが正当とは限らない。しかし、行政改革を考えるのであれば、両者の業務の重なっているところをどちらかにまとめるように業務の移管を考えるほうがよいはずだ。

12月28日の報道には、経済産業省傘下の産業技術総合研究所(産総研)と新エネルギー・産業技術総合研究開発機構(NEDO)の統合もあげられている。産総研は研究機関であり、NEDOは研究資金提供機関である。ただしNEDOの資金提供先はおもに民間企業なので、産総研NEDOとの統合には、JAMSTECその他とJSTとの合併の場合のようなややこしさは含まれないだろう。【[2012-02-11補足] 現状でNEDOの公募で産総研と民間企業が提案競争する場合があったとしても、今後は産総研に行くべき予算枠と民間企業向けの公募枠とを分けてしまえばよいだろう。】 しかし、研究資金提供機関としてのJSTNEDOとの役割には一部重なるところがある。学振とJSTの業務整理統合と同様な可能性として、JSTNEDOとの業務整理統合も考えてよいはずだ。

12月28日の報道には、外務省傘下の国際交流基金と、国土交通省傘下の国際観光振興機構との統合も[そのよしあしはともかく]含まれているので、すべてが省庁縦割りではない。同様に、たとえばJSTNEDOの合併も、複数の案のひとつとしては考えてみるべきだろう。もし各省がそれぞれ自分のいうことをきく法人をもたないと(国全体として公平にみて)行政がうまくまわらないのならば、「独立」と言わずに従属行政法人(民間企業の「子会社」に相当するもの)として法制化するべきだろう。

本気で日本の科学技術研究資金提供機関を統合しようとするならば、たとえば農林水産技術会議を農林水産省から切り離したり、環境省から環境研究総合推進費を担当するいくつかの部署を切り離したりして、学振やJSTNEDOと統合することも考えるべきかもしれない。監督官庁は科学技術イノベーション戦略本部(仮称)である。