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「エア御用」って、「放送局御用たし」のことですよね

「わたしが出会った問題な日本語」への追加。

2011年のいつだったか、ネット上に「エア御用」ということばをときどき見た。それは「御用学者」という用語に関連して使われているらしかった。そこでわたしは、「エア御用」は「放送局御用たし学者」、つまり、テレビ局やラジオ局が好んで出演させたがる学者たちのことをさすのだと思った。「オン・エア」が「放送中」を意味することは、今どきの日本語圏で知らない人は少ないと思うので、的確な表現だと思って、3か月ほど疑わなかった。

ところが、世の中での使われかたはわたしの推測と違っていた。「エア」は「エア・ギター」から来ているそうだ。そんなことばはわたしは知らなかったのだが、説明を読んでみると、子どものころのわたしならば「透明ギター」と呼んだにちがいない。もっとも、それ以後、世の中のプラスチックス加工技術が進んで、ほんとうに透明なギターを作ることも可能なので、今では「透明ギター」ではだめかもしれない。

「エア御用」にはもっとすなおな意味も考えられる。「空気に関する仕事で食っている人」ということだ。これにはわたしも含まれるようだ。もっとも、学者に限るのでなければ、タイヤに空気を入れるのを仕事にしている人も横ならびで含まれる。

【2012-01-28補足: また別の解釈をどこかで読んだ。「空気を読んでそこで期待されることに合わせて行動を変える人」にこそこの表現はふさわしい、というものだ。わたしはその「空気」をどうやったら読めるものなのかわからない。わたしは空気の気温・気圧・風速・湿度などの属性の読みかたならば知っているが、ここでいう「空気」は別ものらしい。】

【2012-01-10補足: 現代でも日本語圏では「御用達」という表記がよく使われ、それが「ごようたし」と読まれることが多いことをわたしは知っている。しかし、わたしは当用漢字音訓表育ちなので(2011年9月10日の記事)、それは「わたしの辞書にはない」。音訓表に教条的に従っているのではない。音訓表の原則(だとわたしが思ったもの)が、わたしにとっての日本語の規範の一部になっているのだ。】