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気象むらの方言

オーダー (order of magnitude)

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】「スケール」という用語に関する記事を書きはじめて、それと関連がある (「スケール」と「規模」、「規模」と「オーダー」にそれぞれ意味の重なりがある) 「オーダー」について、別の…

降水帯、rain band、線状降水帯、squall line

【わたしは気象学という専門を代表する立場にはないが、これまで、「気象むらの方言」のカテゴリーで示した記事の多くは、気象学の専門家からの標準的用語解説として読まれる覚悟をして書いてきた。しかし今回のは違う。気象学の中でも専門は細分化していて…

気候感度についてもう少し広く考える

「気候感度」(climate sensitivity)については、[2015-07-15の記事]で簡単にふれたが、もう少し話題を広げて考えてみる。「感度」は「敏感さ」であって、定性的なものかもしれないのだが、ここでは定量的な扱いができる場合に限ってみる。気候に関する話題を…

二酸化炭素濃度に対する気温の定常応答(平衡応答)と過渡応答、気候感度

【[別ブログ2010-01-20の記事]から、それを書いた当時の時事的話題を取り除いて、ひとまず再録して、改訂を加えています。「気候感度」という表現のいろいろな使われかたは別記事にしました。】定常応答 (steady-state response) 気候システムにとっての外部…

日射量、全天日射、直達日射、散乱日射、日照時間

「日射」と「日照」はどちらも、気象の話題によく出てくるが、(あとに述べるように)それから派生した数量はしっかり定義されているものの、それ自体はあまりしっかり定義されていないことばだ。どちらも、放射 ([2012-07-05の記事]参照) のうち、太陽放射、…

渦、vortex、eddy

渦(うず)ということばは、気象学では、大きく言えば二つの違った意味に使われる。英語で言えば、一方は vortex、他方は eddy である。どちらも、気象に限らず、流体の運動にかかわる多くの分野で使われることばであり、ここで述べることの多くは気象以外の分…

いろいろな解析、分析、analysis

気象学では「解析」ということばが複数の意味で使われる。さらに、日本語では「分析」だが、英語では同じanalysisになるものもある。これだけの意味を使いわけて、まちがいがあまり起こらないのがふしぎなほどだ。まちがいを防ぐために、問い返すこともけっ…

高層

-- 0 -- 現代日本語圏で「高層」と言ったらいちばん多い使われかたは高層建築に関するものだろう。高層建築がどのくらいの高さのものをさすかは時代や地域によってまちまちだと思うが、数十メートルから百メートル程度だろう。地上このくらいの高さは、気象…

(勧めたくない用語) hiatus (ハイエイタス) ... 地球温暖化の温度上昇の停滞

【ブログ「気候変動・千夜一話」の2013-10-17の記事「地球温暖化は止まった?」または「hiatus」に書いたことのくりかえしになりますが、おもに用語の話題として、こちらにも書いておきます。】最近の20年ほどの全球平均地上気温の変化は、その前の20年ほどの…

相変化の用語。「昇華」の逆は「凝華」とするか

多くの物質は、固体、液体、気体の3つの「相」の状態になる。相の間をうつりかわる変化には名まえがついている。ところが、このうち、固体から気体、気体から固体への変化の標準的な名まえは、いずれも「昇華」(英語では sublimation)だ。【わたしは、1970年…

モンスーン、monsoon、季節風

「モンスーン」と「季節風」は、どちらも英語の monsoon に対応し、同じ意味のことばとして扱われることもあるが、区別されることもある。意味の広がりが一定しないので、文脈ごとに確認が必要だ。本論にはいる前に、関連する他の用語についておことわりする…

アルベド (albedo)

Albedo は英語では「アルビードウ」のように発音されることが多いようだが、日本語でふつうの「アルベド」という表記はラテン語に忠実なようだ。もともとラテン語で「白さ」のような意味の語らしい(が、「alb-」が「白い」に関連することだけしか確認してい…

(勧めたくない用語) 暖かい雨

気象学の話題で「暖かい雨(英語ではwarm rain)」「冷たい雨(cold rain)」という表現が使われることがある。これは、雨ができるしくみに関する分類だ。雲粒は水滴または氷の結晶で、雨粒も水滴だが、大きさが違う。雨粒ができるためには、たくさんの雲粒が集…

zonalとmeridional、東西方向と南北方向

気象に関する英語の文書では、zonal と meridional ということばがよく現われる。そのいちばん多く使われる意味は、地球上の位置を示す座標に関するもので、東西方向がzonalで、南北方向がmeridionalなのだ。たとえば、風について([2012-03-18の記事「西風は…

大循環

「大循環」ということばについては[「GCM」の記事]でふれたが、もう少し説明を加えたい。大気の大循環は、大規模な循環にちがいないのだが、この語の意味はそれだけではない。しかし、それではどういう意味か定義のような形で示そうとすると、そう簡単ではな…

気象学での実験

(2月に書きはじめて書きかけだった記事。5月10日に出席した会合で、気象学でのシミュレーションは実験か、という話題があったので、思い出した。)「気象学では実験はできない」と言ってしまうことがある。他方、数値モデルによるシミュレーション(のすべてで…

凝結

気体から液体への相変化は、一般的物理・化学の用語では「凝縮」である。しかし気象学用語では「凝結」という。どちらも英語のcondensationに対応する。気体に対して、液体と固体をまとめて、英語でcondensed matterといい、日本語の物理学用語でも「凝縮体…

最終氷期、(勧めたくない用語)「ウルム氷期」

[2012-04-24の記事「氷河時代、氷期、小氷期」]に続く話題。そのときと同様に、「気象」の用語ではなく、「古気候」の用語だが、便宜上「気象むらの方言」のカテゴリーに含めておく。「ウルム氷期」は「ヴュルム(Würm)氷期」 日本語で1950-70年代に書かれた…

DJF、JJA

気候学者や気象学者にとって、季節が重要なものごとであることはまちがいない。しかし、いつからいつまでを何という季節と呼ぶべきかとなると、こだわるかこだわらないかの両極端に分かれるようだ。直前の記事で紹介した「日本には6季がある」と主張する人々…

梅雨、秋雨/秋霖

日本の気候あるいは季節の話をしようとすれば、梅雨を無視はできないだろう。一般の日本語圏では、「梅雨」と書いて「つゆ」と読む熟字訓がよく使われる。しかし気象学用語の「梅雨」は「ばいう(Baiu)」である。第2次大戦後の国語政策で学術用語には熟字訓を…

バックビルティング?

九州北部豪雨が起きたしくみについての報道で、「バックビルディング」ということばを見かけた。出どころは気象庁の報道発表「平成24年7月九州北部豪雨」の発生要因について 〜強い南西風の持続と東シナ海上からの水蒸気供給〜に資料としてつけられたPDF文書…

地表面のエネルギー収支と水収支

保存則と収支 自然科学で「収支解析」が有効なのは、たいてい、質量保存やエネルギー保存の法則の応用だ。質量やエネルギーについて、次のような式が成り立つ。 d(たまっている量)/dt = 収入 - 支出 ここで「たまっている量」を「貯留量」と書こうと思ったの…

放射(radiation)、正味放射(net radiation)

電磁波と放射能 気象学で「放射」と言ったら、電磁波の伝達・電磁波によるエネルギーの伝達をさす。いわゆる放射能(α線、β線、γ線、中性子線など)に関係する「放射線」「放射能」「放射性」と、形を示す「放射状」は別だが、例外と考えてよいだろう。【[2013…

Sv (スベルドラップ、海洋学で使われる単位)

これは気象むらではなく、となりの海洋学むらの方言だが、気象むらにも、昨年の原子力発電所事故以来毎日のように現われるSvという文字列に、理屈はわかっても頭の奥のほうの切りかえができなくて毎度まごつく人はかなりいると思う。うちのほうのSv (sverdru…

総観規模 (synoptic scale)

「総観」ということばは気象学・気候学に特有だと思う。気象学・気候学では発音が同じ統計学用語の「相関」も出てくるので注意が必要だ。今では、この概念は空間スケールを示す「総観規模」(英語synoptic scale)が基本だと考えてよい。水平スケール数千kmだ…

傾圧不安定

「傾圧不安定」(英語でbaroclinic instability)は、温帯低気圧ができるしくみの話に出てくる概念だ。気象力学で使われる「不安定」ということばの意味については、[5月29日の記事]と[きょうの「CISK」についての記事]を参照してほしい。「傾圧」は「順圧」(b…

第2種の条件つき不安定=CISK

「第2種の条件つき不安定」(英語でconditional instability of the second kind、略してCISK)は、台風を含む熱帯低気圧[6月15日の記事参照]ができるしくみの話に出てくる概念で、前に述べた「不安定」[5月29日の記事参照]という用語が使われているもうひとつ…

前線

気象用語の「前線」は英語では frontという。軍事用語で敵対する軍がぶつかっているところをさすことからの類推にちがいない。概念的には、線の両側に質の違う空気があるような状況で、その線が前線なのだ。実際には空気は連続体でありその温度や湿度などの…

台風

台風とは強い熱帯低気圧 [「低気圧、高気圧」の記事参照]のことだ。日本の気象庁の用語では、地上の風速【注】が約17 m/s (正確にはノット単位で定義されている)を越えると「台風」としている。かつてはこの基準に達しない熱帯低気圧を「弱い熱帯低気圧」と…

低緯度・中緯度・高緯度、熱帯・温帯・寒帯

「低緯度、高緯度」という表現は一定の約束に従って使われているわけではない。それぞれの話題の文脈で、相対的に赤道側か極側かを表わす。ただし、「低緯度、中緯度、高緯度」という組で使うときは、だいたいどのくらいの緯度をさすかの共通理解はあると思…