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バベルの塔の職人長屋

Anthropocene (人類世、人新世) (2) 意図的気候改変(気候工学)との関連

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】 - 1 -[2016-02-06の記事「Anthropocene (人類世、人新世) という新概念の複数のとらえかた (1)」](以下「第1部」と呼ぶ)の続き。意図的気候改変、いわゆる「気候工学」あるいは「ジオ…

Anthropocene (人類世、人新世) という新概念の複数のとらえかた (1)

【まだ書きかえます。どこをいつ書きかえたかを必ずしも明示しません。】 - 0 -Anthropocene ということばが使われる話題については、このブログでも、[2012-12-10「AGU GC51Hほか: 人類世、+4℃の世界」]、[2012-04-03「Planet under Pressure会議宣言文(非…

rate, 率 (3) 相対増加率

「rate」「率」については、[(1) 2014-11-01の記事] [(2) 2015-04-13の記事]に書いたが、本を読んでいたら、この用語には、(1)(2)で論じていなかった使いかたがあることに気づいた。その本に出てくる話では ある量 X が、A, B, Cの3つの因子の積である ので…

ジオエンジニアリング、気候工学、意図的気候改変 (3)

[2013-11-03の記事][2014-01-19の記事]の続き。アメリカ合衆国科学アカデミー(NAS)の関連機関であるNational Research Council (略称はNRCだが原子力規制委員会でないことに注意。日本語表現は決まっていないようだが「全国研究評議会」とされていることがあ…

システム

-- 0 -- 現代、「システム」ということばはそこらじゅうに出てくる。その意味はまちまちだと思う。いろいろな文脈で使われる「システム」ということばから共通の意味をとりだそうとしても、「複数の部分からなり、しかし単なる部分のよせあつめではなく、全…

時計の身になってみたら時計の針は時計まわりなのか

回転の軸の方向をひとまず固定したとすると、その軸のまわりの回転運動の向きには、ある向きとその逆向きとがある。その向きを、どうやって伝えるか、という問題がある。「右まわり」「左まわり」という表現がよく使われる。「右まわり」は、前に進むにつれ…

rate, 率 (2) 死亡率と致死率

「rate、率」について[2014-11-01の記事]に書いたことに関連する話。人口統計などでいう「死亡率」は、時間軸上の単位期間あたりの死亡数の全人口に対する比率だ。時間については「年あたり」、全人口については「千人あたり」「十万人あたり」のような単位…

相変化の用語。「昇華」の逆は「凝華」とするか

多くの物質は、固体、液体、気体の3つの「相」の状態になる。相の間をうつりかわる変化には名まえがついている。ところが、このうち、固体から気体、気体から固体への変化の標準的な名まえは、いずれも「昇華」(英語では sublimation)だ。【わたしは、1970年…

rate、率

英語の rate ということばには、関連はあるが、いくつか違った意味がある。動詞の rate は「評価する」のような意味で、評価の結果は数量のこともあるが、階級わけのことが多い。ここではこの使いかたは追いかけないことにする。名詞の rate は「割合」に関…

Mitigation、緩和(策)、軽減

地球温暖化対策の文脈で、英語で mitigation、日本語で「緩和(策)」ということばが使われる。これは、温暖化の原因を減らすことであり、ほぼ「温室効果気体排出削減(策)」と同じことだ。(「ほぼ」と書いたのは、森林育成など、排出削減という表現に合わない…

極地(北極、南極)の氷

「北極の氷がとけても海面上昇に寄与しない」という議論は、ある意味で正しいのだが、ある意味では正しくない。どちらかといえば「...寄与する」のほうがもっともな局面が多いと思う。水に氷が浮いているとき、氷の一部分は水面の上に出ているが、水面から下…

メキシコ湾流

気候にとっての海洋の役割の話をする材料として、NHK(1998)のドキュメンタリー「海」のシリーズの「深層海流」の回のビデオを使った。その番組で「メキシコ湾流」という用語が使われていることに気づいた。この番組の科学的内容は海洋学の専門家の監修を受け…

「エネルギーを消費する」

「『エネルギーを消費する』という表現は正しくない」という議論がある。この議論は次のような根拠に立っていると思う。 「エネルギー」という用語の意味は、物理学で使われている意味を標準とするべきだ。 物理学でいうエネルギーは「保存則」に従う。つま…

初期値、初期値問題、initialization

時間の関数(あるいは時間と空間座標との関数)となる数量に関する微分方程式または差分方程式で表現される問題のうちには、ある時刻(便宜上 時間座標の原点 t = 0 とされることが多い)での条件が与えられるとそれ以後(t > 0)の値が決まるようなものがある。こ…

ジオエンジニアリング、気候工学、意図的気候改変(2)

[2013-11-03の記事]の話題の続き。Boucherほか(2014)のレビュー論文を読んだ。著者は、イギリス、フランス、ドイツ、スイスを含むヨーロッパの研究者たちである。地球温暖化の対策は、「緩和策」(mitigation)、「適応策」(adaptation)、「ジオエンジニアリン…

福祉、welfare、厚生

日本では外食や衣服のうちに(日本人の所得分布のうちでは比較的に)貧しい人でも買えるような値段のものがあることを、日本型の福祉である、というふうに述べていた人がいた。わたしはその認識が正しいかどうかわからないが、仮に、比較対象となる国では社会…

順問題と逆問題

わたしの頭の中の辞書では、「順問題」「逆問題」の意味はだいたい次のようになっている。 「順問題」(forward problem): 原因から結果を知ろうとすること 「逆問題」(inverse problem): 結果から原因を知ろうとすること これは気象学を含む地球物理学の分野…

デマケ - 出負け?

中央官庁の人を主とする会話の中で、「デマケ」ということばがとびかっていた。わたしには「出負け」と思えたが、それでは意味が通じるような通じないようなだった。わたしも会話に加わる必要が生じた際に、これは英語のdemarcationからきたことばだと教えて…

リニア(linear)、リニア モデル(linear model)

数理科学のリニアモデル英語のlinearは、いくつもの専門分野で、共通した特定の意味に使われる。この「いくつもの専門分野」を「数理科学」と総称しようと思った。しかし、この用語は数学を応用した方法を使う科学をさすのだと思うが、その数学が集合論・ト…

デフォールト(default)

計算機に仕事を指示するとき、詳しい指定をすることもできるが省略することもできるようにソフトウェアを設計することが多い。詳しい指定を省略したときの動作をdefault actionという。日本語では「省略時動作」ともいうが「デフォールトなになに」(「なにな…

高潮と津波、そして気象津波なるもの

フィリピンで強い台風による大きな被害が出てしまった。おもに高潮によるようだ。被災地の映像を見て「津波のようだ」というのはよいのだが「津波だ」といわれると訂正しておく必要を感じる。「津波」と「高潮」は原因で区別していて、地震によって起こるの…

ジオエンジニアリング、気候工学、意図的気候改変

2013年9月27日、IPCC第5次報告書(第1部会の部)が発表された際の日本の文科省・経産省・気象庁・環境省共同報道発表文(http://www.jma.go.jp/jma/press/1309/27a/ipcc_ar5_wg1.htmlからリンクされたPDF) には「ジオエンジニアリング」ということばが出てくる…

鋭い用語づかいと鈍い用語づかい

科学の中での議論を含むがそれに限らず、理屈をたてた議論をするときには、相手との間で用語の意味がだいたい一致していないと議論がすれちがう。現実世界で起こっていることの認識が一致していても、何がAであり何がBであるかの認識が一致していなければ、…

デマ

ネット上(twitterやブログなど)で「デマ」という表現をよく見かける。[前の記事]で導入した用語を使うと、「鈍い用語づかい」で、「事実に反するうわさが伝わり、それを事実と思った人の行動に影響を与えること」ぐらいの意味で使われていることがあると思う…

縄文海進

【これまで、古気候の話題を便宜上「気象むらの方言」のカテゴリーで扱ってきた。[2012-04-24の記事「氷河時代、氷期、小氷期」][2013-04-22の記事「最終氷期、『ウルム氷期』(?)」] 今回の話題もそれと関係あるのだが、古気候よりも広い古環境の話題なのと…

インフラとinfra

「インフラ」あるいは「社会インフラ」という表現を見聞きすることが多くなった。これのもとは英語のinfrastructureあるいはそれと同じ起源の西洋語にちがいない。ラテン語の前置詞に由来する英語の接頭語を名詞として使うのは、わたしにはどうにも気持ちが…

流量

気象に関する情報処理の専門家のブログ記事の表題に、「流量調査」ということばが、「気象」「防災」といっしょに示されていた。てっきり、この「流量」は川の水の流量(その慣用表現については[2012-04-27の記事]参照)のことだと思った。気象災害のうちでも…

風向のデータ伝達は要注意

原子力規制委員会が、原子力発電所にもし事故が起きた場合に放射性物質が風によってどう広がるかのシミュレーションの結果を発表したが、シミュレーションの材料となった風の観測データの風向の表現の解釈がまちがっていたので、結果もまちがっていた、とい…

マグニチュード、震度など、現象の規模の表現

地震の「マグニチュード」と「震度」の関係が単純でないことが話題になっていたのを見た。これを機会に、自然現象(や、一部の社会現象)の大小の規模についての表現について、知識を整理しておきたい。ひとまず、資料調べをせずに、頭の中にあることを書き出…

(勧めたくない用語) 閉じた系 (閉鎖系)

「系」は英語ではsystemでありいろいろな文脈で使われることばだが、ここでは熱力学用語の「系」に限る。これは日本語で「システム」と言われることは少ない。熱力学の知識は自然科学の多くの分野で基礎として使われる。そこで「開いた系」(あるいは「開放系…