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2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

海外出張・旅行は1か月がかりの時代がまた来る

小宮山(1999, 69ページ)の言いかたによれば「水平輸送のエネルギーの理論的極限はゼロである。」しかし現実には、われわれのエネルギー資源消費のうち、かなりのものは移動・輸送のために使われる。とくに飛行機は、移動距離あたりのエネルギー資源消費が大…

エネルギー資源の問題三角(トリレンマ)についての個人的意見

エネルギー資源に関する政策の課題は、英語の頭文字で3E (energy=エネルギー、environment=環境、economy=経済)の三つの角(つの)をつかむ問題(tri-lemma)だと言われることが多い。ここで「energy」はエネルギー供給の確保をさし、「energy security」と書か…

「河川流出モデル・基本高水の検証に関する学術的な評価」について

9月28日、日本学術会議の土木工学・建築学委員会の下に作られた「河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会」の「河川流出モデル・基本高水の検証に関する学術的な評価」(回答)の公開説明会を聞いた。これは科学者による政策決定への助言を日本学術会議とい…

論理的に言えること、言えないこと

次のような議論をする人がいるようだ。 原子力利用推進論者が「二酸化炭素は地球温暖化を起こす」と言っている。 原子力利用推進論者の言うことは信頼できない。 したがって、二酸化炭素は地球温暖化を起こさないにちがいない。 1は(「すべての」ではなく「…

下町トリアージ

地球温暖化に伴う海水準の上昇が避けられないことになりそうだが、その数量は、人間活動からの温室効果気体排出の不確かさに加えて、大陸氷床の融解や海洋深層の熱膨張のプロセスに関する科学的知識の不確かさもあって、あまりよくわからない。IPCC報告書な…

理系知識人と文系知識人の発想について

安井至氏のウェブサイト「市民のための環境学ガイド」の9月18日の記事「内田樹氏と藤原正彦氏の主張」の中に、藤原氏の著書「日本人の誇り」の論点を参考にした、文系知識人と理系知識人の発想の違いの議論がある。理系の側から、文系知識人の議論のしかたに…

津波火災、エネルギー貯留担体に関する注意

これもテレビ番組を見て考えさせられた件。NHKテレビ9月11日21時(15日0時15分の再放送を見たのだったかもしれない)の「NHK特集『巨大津波』」を見て、東日本大震災の被害のかなり重要な部分が「津波火災」によっていたことを知った。地震の揺れに伴って火事…

日本の原子力発電の歴史、津波に負けた理由

題目にした話題の全般の話ではなく、テレビ番組とそれを見た感想の覚え書きである。NHK教育テレビの、2011年9月18日22時から23時半までの「ETV特集:原発事故への道程(前編)」を見た。前編はサンフランシスコ講和(1952年)から東京電力福島第1原子力発電所建…

ダム建設はその目的から考えなおそう

やんばダム【わたしは「八ッ場ダム」と書くことを避けたい。理由は[別記事参照]】についてのニュースがあった。「国土交通省が他の策と費用の比較をした結果、ダムのほうが安上がりになることがわかった」というような話らしかった。情報もとは国土交通省河…

経済成長へのこだわりを捨て、再生可能エネルギーに適応しよう

原子力発電所の事故をきっかけに、地球温暖化(の原因)は加速してしまったにちがいない。(直接の被災地以外の)日本の(そしてたぶんほかの国の)人々が、エネルギー資源の消費をいくらか節約はしたが、産業構造を変えてまで減らすことはせず、原子力による電力…

やんば? やつば? Yabba? Yappa?

ダムについて論じようと思ったのだが、その例のところに注釈をつける必要があるので、それを先に書く。建設が中断されているダム(になる予定のもの)のひとつの名まえが、文字では「八ッ場ダム」と書かれている。しかし声では「ヤンバダム」というのが正しい…

すべての白鳥は白いか

英語で、論理について説明するとき、次の例文にたびたび出会う。 All swans are white. だれが言い出したのかは知らないが、わたしが出会ったのはKarl Popperの仮説反証主義といわれる科学方法論の話題でだった。人はすべてのswanを観察しつくすことはできな…

「北京」をベイジンと読むべきか

わたしの今のところの結論は「ペイチン」が適切というものだ。真山仁の小説「ベイジン」[わたしの読書メモ]の題名は「北京」をさすのだが、とくに、中国がオリンピックを機会に北京をBeijingというつづりとともに世界に売り出したことをさしている。このよう…

万能薬症候群

世の中に、科学的に考える人の多くがまちがっていると判断する言説が、流行することがある。まちがい自体は常にありうることだ。まずいのは、ある言説に対して、批判が起こっても、その言説の信奉者がそれを聞こうとしなくなることだ。こういうことは、いろ…

2002年9月11日の記憶

2002年9月11日にはニューヨーク郊外の大学キャンパスにいた。前の年のパリの会議とメンバーの一部が重なる、ひとまわり小さい会議だった。主催者が、アメリカは元気だということを示すためにわざとニューヨークで開いたのだった。ニューヨークの町は通過した…

2001年9月11日の記憶

2001年9月11日、わたしはパリのカルチエラタンにいた。200人規模の1週間の会議だった。日本からやってきた同僚が日本語で「貿易センタービルに飛行機がつっこんだ」と言ったので驚いた。貿易センタービルといえば(東京の)浜松町の羽田空港行きのモノレールの…

2種類の「はずれ」をどちらもなるべく小さくしたいのだ

統計学や意志決定論の教科書で「第1種のまちがい」「第2種のまちがい」という表現をしていることがあるが、わたしはどちらがどちらだったか覚えられない。ともかく、2種類のまちがいがあることを忘れてはいけないということだ。一般的に、一見よく似たものが…

当用漢字育ちの日本語表記論

[前の記事]で、「からぶり」を「空振り」と書かなかった。漢字変換で「空振り」が出てきたのだが、それでは「空気の振動」のような気がして(「空間の振動」だと思わなかったのはたまたまだが)、ほかに適当な候補がなかったので、ひらがなにしたのだった。少…

もっと植物性たんぱく食を開発してほしい

ヒトという種が今のような形に進化したのは肉食をしたおかげだという説もある。人は動物を食べることなしで生きるのはむずかしいかもしれない。しかし、純粋な肉食ではなく雑食であり、植物を食べることもできる(デンプンは消化できるがセルロースは消化でき…

広瀬隆氏と武田邦彦氏をもてはやさないでほしい

[わたしはブログ記事を公開後に修正することがある。大きな修正をしたときにはその日付を示すことにしているが、細かい修正では必ずしも明示していない。あらかじめおことわりしておく。]わたしのよく行く本屋には、目立つところに原発事故関係の本のコーナ…

環境税(炭素税)または排出枠収入でどんな国民の負担を減らすか

環境問題は、経済学の用語でいう「外部不経済」を含む。生産活動に伴って他の人に損害(外部費用)が生じるのを避けるためには、その費用を生産者に負担させる必要がある。費用負担のしくみを作るところは市場経済だけではできず、政治による市場への介入が必…

環境行政を忘れないで

新内閣の顔ぶれが報道される際に、「原発事故担当大臣が環境大臣を兼任する」という表現があった。両方の役割を同じ人が兼ねることになったのは事実だ。また、菅内閣での構想どおり原子力安全庁が環境省のもとにつくられるのであれば、内閣で原子力安全庁を…

正しい御用学者をめざして

「御用学者」ということばがはやっている。狭い意味では、権力者の利害にそった主張に科学的根拠があるかのようによそおうために、うそをつく学者のことをいうらしい。そういう御用学者は、もちろんいないほうがよい。しかし、広い意味でいうならば、いまど…

大正関東地震は予知されていたか

昨日(8月31日) 22時からのNHKテレビ「歴史秘話ヒストリア」は、地震を主題とした話だった。NHKがすでに放送した番組のために取材したものを、関東大震災の記念日を前に構成しなおしたものらしいが、防災を考えるうえで意義のある企画だったと思う。ただし、…

エコ : 出典(例)がわかった

[7月30日の記事]の補足。「『エコ』とは environment conscious だ」という考えを次の文献(177ページ)で見た。どうやらわたしの頭にあったのはこれを読んだ記憶だったらしい。 水谷 広, 1999: 人間活動と物質循環系のグローバルな変化。水・物質循環系の変化…